下水道管路管理マニュアル解説:都市生活を支える下水道の仕組みと重要性(第37話)

2023年12月22日金曜日

公共下水道

人孔

管 とおる

みかんちゃん、前回はウォーターPPPについてお話したね。
→ウォーターPPPとは?上下水道事業に革新をもたらす官民連携(第36話) ←
現在、下水道に関わる人たちが、ウォーターPPPについて試行錯誤している状態なんだ。

諏訪 美管

ウォーターPPP、
最初は難しそうなイメージでしたが、KANMAGAを読んだらなんとなく分かりました!

さて、KANMAGAも今日で37回目だけど、ここで初心に返ってみかんちゃんには下水道の基礎知識をはじめから復習してもらおうと思うよ。

どんなことも基礎が大事ですよね!
下水道のこと、だいぶ詳しくなってきたけど復習もかねてぜひ一からお願いします。

了解!
では、公益社団法人 日本下水道管路管理業協会から出版されている[下水道管路管理マニュアル-2023-]をもとに解説していくね。

下水道維持管理マニュアル-2023-
こんなマニュアルがあるんですね~!なんだか難しそうな雰囲気ですが簡単によろしくお願いします。

[下水道維持管理マニュアル-2023-]は下水道のすべてが書いてあると言っても過言ではないからシリーズで少しずつ解説していくね!
今日はPart.1として、下水道の基礎、『下水道の種類と役割』について、レッツゴー\(^o^)/







下水道の役割

まずは、根本的な下水道の役割について。
下水道が担ってる役割を簡単にいうと、
①清潔に保つ②浸水などの災害を守る③河川や海を綺麗に保つ④水の循環に貢献の4つがあるんだ。

わたしたちが快適で安全に暮らせるのは、下水道の存在が大きいんですよね。

そうだよ!
では下水道の4つの役割についてもう少し詳しく説明するよ!

① 汚水の排除とそれによる生活環境の改善

下水道は、家庭や工場などから出た汚水を安全で効率的に排除することにより、衛生的な生活環境を実現します。 この基本的な役割により、疾病の発生を防ぎ、人々の健康と安全な生活を守ります。

② 浸水防除

集中豪雨や台風などによる都市部の浸水を防ぐためには下水道システムが不可欠です。
下水道や雨水を一時的に溜めておく貯留施設などにより、災害時の被害を最小限に抑え、安全な都市環境を維持します。

③ 公共用水域の水質保全

下水道は、処理された水を川や海などの公共用水域に戻すことで、水質を保全します。
これは生態系の保護と持続可能な環境管理に貢献します。

④ 循環のみち下水道

下水処理過程で発生した処理水や下水汚泥は工業用水やレンガ・タイル、セメントなどの原料、肥料などにも再利用することができます。 これにより、水資源の循環と環境保護を促進します。


普段目にはみえないけど、豊かな生活を守る縁の下の力持ち!やっぱり下水道って素敵(*^^*)




下水道の種類

下水道
下水道と一口に言っても、細かく見ていくと実は管理者の所在によって、いろいろな種類があるんだ
①公共下水道②流域下水道③都市下水路
の3種類だよ。

そうだったんですね~

下水道図

画像引用元:国土交通省 下水道の種類の概念図

①公共下水道

公共下水道は、地方公共団体が管理している下水道です。
家庭やビルからの汚水を集め、処理施設で浄化することを目的としています。
公共下水道は市民の生活環境を改善し、衛生的な住環境を提供するために不可欠です。

②流域下水道

流域下水道は、2つ以上の市町村の下水道区域から排除される汚水、もしくは雨水を対象としている下水道です。
管理は原則として都道府県が行います。
流域下水道は、広い地域の汚水処理を一元的に管理することで効率を高めます。

③都市下水路

都市下水路は、都市部に設置され、主に雨水や地表水の排水を目的としています。
洪水防止や都市部の過剰な水分を排除するために重要です。
これにより、都市の安全性を高め、災害時の被害を軽減することができます。



その他の汚水処理施設

④集落排水

集落排水は、特に農村地域や小規模な集落に適用される下水処理システムです。
これは、集落全体の生活排水を集めて処理することで、個々の家庭での処理負担を減らします。
集落排水は、地域の環境衛生を向上させると共に、小規模なコミュニティの生活基盤を支える重要な役割を担っています。


⑤合併処理浄化槽

合併処理浄化槽は、家庭からの汚水とトイレからの汚物を一緒に処理するシステムです。
このシステムは、特に公共下水道が整備されていない地域で利用され、効率的に汚水を浄化します。
合併処理浄化槽は、限られたスペースでも設置が可能であり、中小規模の建物や施設に適しています。

⑥コミュニティープラント

コミュニティープラントは、小規模なコミュニティや集落専用の汚水処理施設です。
この施設は、住民の生活排水を集め、地域内で処理を行います。
コミュニティープラントの設置により、地域ごとの環境対応が可能になり、大規模な下水道システムの負担を軽減します。
また、地域の特性に応じた最適な処理方法を採用することができます。


下水道ってこんなに種類があったんですね!!

さらに下水道には雨水と汚水を一緒に流す合流式と別々に流す分流式があるんだ!

排除方式

合流式

合流式下水道では、雨水と生活廃水が同じ管路を通って処理場に運ばれます。
このシステムは設置が容易ですが、大雨の際には処理場の能力を超えることがあります。

分流式

分流式下水道では、雨水と生活廃水が別々の管路を通ります。
これにより、処理場での過負荷を防ぎ、より効率的に汚水を処理することができます。
ただし、設置コストは合流式よりも高くなります。





下水道施設の種類

下水処理場

とおるさん、下水道下水施設ってなにが違うんですか?

下水道は『管路施設』といって『下水道』よりもっと広い分野で見ると下水施設と呼ばれるんだ!みかんちゃん、家庭から出た汚水はどこに行くか覚えているかな?

はい!家庭の排水管から公共下水道を通って下水処理場に行くんですよね!

施設
その通り!その下水処理場も下水施設のひとつなんだよ!下水道施設っていうのは次のような種類があるんだ!

①管路施設

管路施設は下水道システムの主要な部分で、汚水や雨水を収集し、処理場に運ぶためのパイプラインです。
これらは都市全体に広がり、家庭やビルから発生する廃水を効率的に管理します。

②ポンプ場、マンホールポンプ

ポンプ場やマンホールポンプは、下水道システムにおいて重要な役割を果たします。
地形の高低差によって重力だけでは流れない汚水を、必要な場所へ移動させるために使用されます。

③処理場施設

処理場施設は、集められた汚水を浄化する場所です。物理的、化学的、生物学的な処理を組み合わせて、汚水から汚染物質を取り除き、安全に環境に戻すことができます。

なるほど~!わたしたちが使ったトイレやお風呂の排水が処理場でキレイな水に生まれ変わるまでに通過する場所全部を下水施設って言うんですね~

そうだよ!下水道の仕組みについては、過去の記事を参考にしてね。

下水道施設のしくみについて詳しくはこちら





下水道資源と施設の有効利用

下水道の再利用
さっきも少し説明したけど、下水道は、循環型社会を作る一環として下水道資源を再利用することにも力を入れているんだ。

どんなものを再利用しているんですか。

①下水処理水

下水処理水は、下水道で処理された後の水です。
これは農業での灌漑、工業用水、さらには市街地の緑化などに利用されることがあります。 再利用することで、貴重な水資源を節約し、環境保護にも貢献します。

②下水汚泥

下水汚泥は、下水処理過程で生じる固形物です。
これを乾燥させて肥料や建築材料として利用したり、エネルギー源としての発電に使うことができます。
汚泥の再利用は、廃棄物の量を減らし、資源を有効活用する方法として重要です。

③下水管の空間

下水管の空間は、通信ケーブルの敷設など、他の目的にも利用できます。 これにより、新たな地下施設を作るコストを節約し、都市の機能性を高めることができます。

④下水処理場の上部

下水処理場の上部の空間は、公園やレクリエーション施設として利用することが可能です。 これにより、限られた都市空間を最大限に活用し、市民の憩いの場を提供できます。

⑤下水熱

下水道に流れる水は、一定の温度を持っています。
この熱エネルギーを回収して、暖房や冷房、温水供給などに利用することができます。
これはエネルギー効率を向上させ、環境負荷を減らす有効な方法です。

すご~い!!下水道ってほんとに無駄がありませんね!!

今回は、下水道施設の基本的な部分。
次回は少し小難しいけど、下水道の財政管理について説明するね。

KANMAGAを見てくれている皆様のためにも、よろしくお願いしま~す!!

この記事をシェアする