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下水道インフラ点検の知識:硫化水素腐食・道路陥没まとめ (50話)

2025年4月8日火曜日

下水道の基礎知識/下水管について


都市の道路が陥没し、地下の下水管が露出している様子。周囲にはパイロンやバリケードが設置され、通行止めの表示がある。インフラ老朽化による危険性を表現。

下水管の劣化が引き起こす道路陥没硫化水素腐食の実態、そしてそれを防ぐ簡易点検の手法までを徹底解説。
現場で役立つ基礎知識と対策がこの一記事で分かります。



道路陥没のメカニズムと下水管の劣化要因を徹底解説


見えない危険を防ぐために知っておきたい基礎知識


管 とおる

今回は「道路陥没」のメカニズムと、その背景にある「下水管の劣化要因」について解説していくよ。


諏訪 美管

道が突然陥没するって、ちょっと怖いですよね…!原因が下水管にあるってほんとですか?


管 とおる

道路陥没の内容についてオンラインセミナーを行ったんだ。


本編は、こちら

諏訪 美管

このセミナー、すごく分かり易くて好評だったんですよね!
ぜひKANMAGAの読者の方にも説明お願いします!

管 とおる

OK!では今回は、その内容をブログ形式で簡単に説明するね。
下水管にひび割れや隙間ができると、地下水や雨水が漏れ出し、周囲の土砂を引き込んで空洞ができるんだ。
その空洞が大きくなると、地表を支えきれずに道路が陥没してしまうんだ。

諏訪 美管

そんな仕組みだったんですね!下から崩れるなんてホントに怖いです。…!

管 とおる

特に注意したいのが「硫化水素」。これは嫌気状態の下水で発生し、空気に触れると硫酸に変化するんだ。
硫酸はコンクリートを構成する水酸化カルシウムを化学反応で変質させ、もろく崩れやすい物質に変えてしまうんだ。

諏訪 美管

嫌気(いやけ)状態????
下水道管の中が嫌~な感じになっちゃうんですか?

管 とおる

あはは、正しくは嫌気(けんき)状態だね!
後で詳しい説明をするから、今は「硫化水素」が下水管の劣化原因の中でも重要、ってことだけ覚えておいてね!


見えない危険を防ぐために知っておきたい基礎知識


突然の道路陥没──その多くが地下の下水管の異常に起因していることをご存じでしょうか。

道路陥没の発生メカニズム

下水管の損傷が進行すると、ひび割れやジョイント部の隙間から地下水や浸入水が管内へ漏れ出します。
この漏水により、周囲の土砂が引き込まれてしまい、管の外側に空洞が形成されていきます。
空洞が大きくなると、最終的に地表を支えきれなくなり、道路の陥没が発生します。

  • 損傷の原因① 経年劣化
    長期間使用された管は素材が脆化し、ひびや穴が生じやすい
  • 損傷の原因② 地盤沈下・地震
    地盤変動による管の変形や接合部のズレ
  • 損傷の原因③ 外部荷重
    大型車両の通行や工事振動による圧力集中
  • 損傷の原因④ 化学的腐食
    硫化水素硫酸に変化し、コンクリートを劣化させる

下水管の腐食を招く主因:硫化水素の影響

硫酸塩還元菌という微生物が、嫌気状態で下水中の有機物を分解し硫化水素(H2S)を発生させます。
この硫化水素が空気に触れることで酸化し硫酸(H2SO4となり、コンクリートの水酸化カルシウムと反応して硫酸カルシウムに変化。これがもろく崩れやすい石膏質の物質であるため、構造劣化が急速に進行します。

  • 嫌気状態
    酸素が少ない環境で硫化水素が生成
  • 段差や吐出部
    硫化水素が空気中へ放散
  • 好気状態
    マンホール周辺など酸素が多い場所で硫化水素が硫酸に変化

硫化水素による下水管腐食の仕組みと現場での対策


硫化水素が発生するメカニズム


管 とおる

それじゃあ今度は硫化水素(H2S)について深掘りしていくとしよう!
知らないと怖い、でも知れば対策できる──そんな内容だよ。

諏訪 美管

硫化水素(H2S)って、下水道管の腐食の原因ですよね……
そもそもどうやって発生するんですか??

管 とおる

発生源は「硫酸塩還元菌(SRB)」という微生物なんだ。
嫌気状態…酸素がない状態で、硫酸イオンをエネルギー源(食べる)ことをしながら硫化水素を作り出すよ。
 

諏訪 美管

ふむふむ…なんだか、人間が酸素を吸って二酸化炭素を吐くのに似てるのかなぁ?

管 とおる

確かに似ているね!
そして、「硫酸塩還元菌(SRB)」が生み出した硫化水素が大気に放散される。
それれが硫黄酸化菌と結合して硫酸が生成されるんだ。

諏訪 美管

硫酸!? 学校の授業で習った、いろいろ溶かしちゃうあれですか!?

管 とおる

おぉ、なんだか懐かしいね(笑)

ここで覚えておくこと
硫酸塩還元菌」は、酸素がない嫌気状態の場所で元気に活動して、硫化水素を発生させる。

硫黄酸化菌」は、酸素がある好気状態の場所で硫化水素と結合して硫酸になるんだよ。

腐食しやすい構造と環境条件

諏訪 美管

下水道の中でも、硫化水素硫酸が発生しやすい場所とかって
あったりするんですか?

管 とおる

マンホールや段差のある構造は、酸素が供給される好気状態になりやすいから、硫酸が生成されやすいね。
長いスパンの大口径管は、深いマンホールは、逆に空気の循環が悪く嫌気状態になりやすいよ。汚泥が堆積していると、有機物が多いから硫化水素の濃度も上がるよ。
あとは、圧送管の吐き出し口も空気と触れやすいから、硫酸が集中しやすいね!

現場で実践される硫化水素の抑制対策

諏訪 美管

硫化水素や硫酸の発生を抑えるために、現場ではどのような対策をしてるんですか?

管 とおる

対策の基本は、嫌気状態をできるだけ作らないことだね。
流下式下水道では難しいけど、現場では定期的に汚泥を清掃したり、薬剤を散布して微生物の活動を抑えたりしているよ。

見えない腐食ほど、早期対応がカギになるんだ。
嫌気環境を避け、清掃や点検、分析の継続こそが最大の予防策だよ。

諏訪 美管

しっかり学んで、点検のプロを目指しますっ!次の「簡易点検の方法」も気になります〜!

化学反応と微生物の活動が引き起こす構造劣化の実態


下水道の維持管理において見逃せない課題が「硫化水素(H2S)」による下水管腐食です。

硫化水素の発生源は硫酸塩還元菌(SRB)という微生物です。
この菌は嫌気状態(酸素のない環境)で、下水中の有機物と硫酸イオン(SO₄²⁻)を栄養にして呼吸し、硫化水素ガスを生成します。
発生した硫化水素ガスは、管路内の空気中に拡散されると、酸素と反応して硫酸(H2SO4に変化します。
この硫酸がコンクリートに含まれる水酸化カルシウムと反応し、硫酸カルシウム(石膏)を生成。これがもろく崩れやすいため、腐食が急速に進行します。

  • 1. 嫌気状態になると硫酸塩還元菌が活性化
  • 2. 下水中の油脂・有機物を分解しながら硫化水素を生成
  • 3. 滞留水や汚泥が多い区間で発生しやすい
  • 4. 好気状態硫酸に変化
  • 5. 硫酸がコンクリートと反応し脆弱化(石膏化)
  • 6. 鉄筋が露出し酸化、さらに構造が劣化

構造・条件 腐食のリスク
長スパンの大口径管 空気の循環が悪く、嫌気状態が継続しやすい
マンホールや段差構造部 好気状態で酸素が供給され、硫酸が生成しやすい
汚泥が堆積した区間 有機物が多く、硫化水素の濃度が高くなる
圧送管の吐出口付近 空気と触れやすく硫酸化が集中する

実際の流下式下水道では、酸素の供給が困難なため以下のような対応策が検討されます。
  • 定期的な管内清掃で汚泥の滞留を抑制
  • 薬剤散布による微生物活動の抑制
  • エアレーションによる酸素供給(処理場や中継ポンプ場)
  • 段差構造の改善(人工段差の解消や吐出口の勾配調整)


小・中・大口径 下水管の簡易点検方法と留意点


点検効率を高め、事故を未然に防ぐための基本知識

管 とおる

次は「下水管の簡易点検」について説明していくよ。
異常を早期に見つけて、事故を未然に防ぐための大切な手段だよ。

諏訪 美管

おっ、点検ですね!現場に出るとよく聞きますけど、実際どんな方法があるんですか?

管 とおる

下水管のサイズによって点検方法が変わるんだ。
小・中口径では、マンホールの上から管口カメラやズームカメラを使って中を見ていくよ。
大口径の場合は、浮流式カメラを使ったり、管内に人が直接入って、目視で異状がないか確認するんだ。

諏訪 美管

なるほど…現場に合わせた機器や手法の使い分けが重要ですね!

小・中口径管:管口カメラによる高効率点検


諏訪 美管

管口カメラって、マンホールの上から安全に管内を確認できるアレですね!

管 とおる

さすが美管ちゃん!よく知ってるね。
管口カメラは4~5mほどのポールの先端にパン・チルト機能のついたカメラが付いているんだ。
フルHDで撮影できるから上下流最大約20~40mの範囲で、状況にもよるけど、クラックや鉄筋の露出なんかも確認できるよ。




 

大口径管:浮流式カメラで管内全体を把握

諏訪 美管

浮流式…ってことは、水に浮かべて使うカメラ、ってことですよね?

管 とおる

その通り! 800~2000mm以上の大口径管は下水の流量が多いから、それを利用して130°の視野角を持つカメラを船のような土台に乗せて流すんだ。
管路に人が立ち入るよりも安全に長距離を点検できるから、安全性と効率性に優れているよ。
HD画質のカメラで管を撮影できるし、外部照明を使えば大きい管でも鮮明に撮影できるよ。





管 とおる

簡易点検は、ただカメラで映すだけでなく、
「何を見て」「どう判断し」「どう守るか」が重要なんだ。
インフラを守る戦略的な活動として、しっかり取り組んでいこうね!

諏訪 美管

点検って奥が深いんですね…!
カメラ片手に、私も“守るプロ”目指して頑張りますっ!

点検効率を高め、事故を未然に防ぐための基本知識


下水管の健全性評価において、迅速かつ効率的に異状を把握するための手段が簡易点検です。
本記事では、小・中・大口径管に適した点検方法や、現場での留意点、ツール選定のポイントを紹介します。

分類 口径サイズ 主な点検手法 使用機器・特徴
小・中口径 800mm
未満
管口カメラ ・ポール長約5m、パン・チルト機能で視点移動も簡単に観察可能
・フルHD高画質によりクラックや鉄筋の露出も確認しやすい(状況による)
・上流側・下流側から20〜40m程度を確認
大口径 800mm
以上
浮流式カメラ ・800〜3000mm以上の管に対応、SDカード記録方式
外部照明により高照度の映像を撮影が可能
・人が入らずに長距離点検でき、安全性と効率性が高い

点検の頻度設定と優先順位の考え方


清掃・点検の頻度は一律ではなく、管路の状態に応じて調整すべきです。
  • 土砂堆積が見られる区間 → 頻度を高く設定
  • 段差構造や腐食実績のある箇所 → 重点的に点検
  • 過去に事故歴のある管路 → 優先度を高く

国土交通省の「公共下水道における点検マニュアル」では、腐食リスクが高い箇所については5年に1度の点検が義務付けられています。

管 とおる

もっと詳しく知りたい方は、オンラインセミナーを見てください。
本編は、こちら

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