ウォーターPPP導入のメリットと課題:下水道事業における官民連携の重要性(45話)

2024年9月30日月曜日

公共下水道

ウォーターPPP導入のメリットと課題
この記事の概要:ウォーターPPP導入のメリットと課題:下水道事業における官民連携の重要性(45話)

管 とおる

みかんちゃん、まずはウォーターPPPについて、前回の記事を読んで復習してきてほしいな。

ウォーターPPPとは?



諏訪 美管

復習してきました☺️

ところで、ガイドラインの“コンセッションを前提に”のところが変わってましたがどういうことですか?
※ウォーターPPPに関する、2023年からのガイドライン変更箇所

※2023年からのガイドライン変更箇所

コンセッションを前提とした記載が、コンセッションを選択肢として検討していただきたいに変更されました。

ガイドライン変更

第1.1版 第36回PPP/PFI検討会等資料(R6.6.28)

ウォーターPPPに関するQ&A 令和6年4月24日時点

  • Q: レベル3.5の後、コンセッション方式に移行することとされているが趣旨如何?
  • A: レベル3.5の後継としてコンセッション方式(レベル4)を選択肢として検討いただきたいという趣旨です。

  • Q: レベル3.5(原則10年)の後、コンセッション方式に移行しない場合、ペナルティが発生するか?
  • A: レベル3.5の後継としてコンセッション方式(レベル4)を選択肢として検討いただきたいという趣旨であり、ペナルティが発生することは想定していません。

コンセッションは義務ではなく、検討事項となります。



管 とおる

2023年のウォーターPPPは、最初コンセッションを必ずやらなきゃいけないって決まりがあって、そのハードルがすごく高かったんだ。
だから、参加する地方自治体も少なくて・・・

そこで、コンセッションは「検討すればいい」って形に変わって、やらなくてもペナルティはないよって言い切ったんだ。
要するに、参加しやすいようにハードルを大きく下げたってことなんだよ。


官民連携についてはこちらを参照



諏訪 美管

ということは、10年間の包括民間委託でも良いとのことですか?

管 とおる

そのとおりだよ。
長期契約性能発注が、ウエイトを占めるから企業の技術を思う存分使えるってことだね。

諏訪 美管

それであれば、とっても良い施策だなと思います。

今回は、とある市(A市)で行っている現状とウォーターPPPの課題や取り組みについて説明するね。
A市の人口は約25万人。市内は、山や湾があり、観光地としても人気がある場所なんだ。

そんな素敵な環境で、下水道事業がどう関わっているのか興味がありますね。

A市の下水道整備率は約75%で、下水道処理人口普及率は92.3%だよ。
市はインフラの整備を進める一方で、環境保護にも力を入れているんだ。

令和5年には、ウォーターPPP導入に向けた市場調査を実施して、令和7年4月には発注を予定しているんだ。







1. 現状のA市の課題と対策


A市の下水道事業では、いくつかの重大な課題が浮き彫りになっています。
これらの課題は、A市だけでなく、全国の多くの自治体が共通して直面している問題です。
ここでは、A市が直面している主要な課題と、それに対する具体的な取り組みについて話していきましょう。


A市の下水道インフラは、かなり古くなっているんだよね。特に、高度経済成長期に整備された部分は、すでに50年以上が経過していて、老朽化が進んでいるんだ。

それって、具体的にどんな問題が起きているんですか?

例えば、管路の破損や浸水、地盤沈下などが懸念されているよ。特に、地震などの自然災害が発生した際には、老朽化したインフラが甚大な被害を受ける可能性が高くて、住民の安全にも影響を及ぼすんだ。

A市ではその老朽化にどう対処しているんですか?

A市では、計画的な改修を進めているんだ。ストックマネジメント計画を策定して、定期的に点検や劣化診断を行い、優先的に改修が必要な箇所を特定しているんだよ。 また、5年単位の包括的民間委託を実施して、民間の技術力を活用してインフラの改修を進めているんだ。

でも、下水道事業って、ものすごくコストがかかるんだよね。それが自治体の財政に大きな負担をかけているんだ。


ストックマネジメントについてはこちらを参照

それだけ費用がかかると、下水道料金を上げなければいけないんじゃないですか?

そうなんだけど、住民の負担を考慮すると、簡単には料金を引き上げられないんだ。だから、A市ではウォーターPPPを導入をして、民間企業の技術力と資金を活用することで自治体の負担を軽減しようとしているんだ。

まだまだ、課題はあるよ。
近年、自然災害が頻発しているよね。その規模もどんどん大きくなっているし、A市でも台風や大雨、地震などによる被害が心配されているんだ。特に浸水被害が大きな問題なんだよ。

そういう災害に対して、A市ではどう対応しているんですか?

A市では、下水道施設の耐震化や洪水対策を強化しているよ。具体的には、重要な管路や処理施設の耐震補強工事を進めたり、浸水対策としてポンプ施設の増設や排水能力の向上を図ったりしているんだ。さらに、災害時に備えた緊急対応計画も策定して、災害が発生した時には迅速に対応できる体制を整えているんだ。
下水道事業って、非常に高度な技術と豊富な経験が必要なんだ。でも、技術者が高齢化しているし、若手技術者も減少しているから、技術継承が難しくなっているんだよね。

技術継承ができないと、事業運営に支障が出てしまいますね。どうやってその問題に対処しているんですか?

A市では、まず若手技術者の育成に力を入れているんだ。技術の標準化とマニュアル化を進めて、個人に依存しない技術継承を目指しているんだ。 さらに、ウォーターPPPを導入することは、民間企業の技術力や人材を取り入れ、技術継承の補完を行うことも計画しているんだよ。

最後に、下水道事業は、多量のエネルギーを消費するから、温室効果ガスの排出が大きな問題なんだよ。

それに対して、A市ではどのような取り組みをしているんですか?

A市では、脱炭素化に向けた具体的な対策を進めているよ。まず、下水処理施設のエネルギー効率を向上させて、使用電力を削減する取り組みが行われているんだ。それに加えて、再生可能エネルギーの利用を促進するために、太陽光発電施設の導入も進めているよ。




2. ウォーターPPP導入の手順

A市の【ウォーターPPP導入手順】は、

①計画段階
②市場調査
③民間事業者との対話
④契約準備
⑤実施

に至るまで、慎重に進められているんだ。

①計画段階では、どんなことが行われるんですか?

計画段階では、まずA市の現状と課題を詳細に分析することから始まるんだ。例えば、老朽化したインフラの改修災害リスクへの対応財政負担の軽減などが挙げられるよ。これらの問題を解決するために、どのような官民連携のモデルが適しているかを検討するんだ。

なるほど。それで、A市ではどんな方針で進めることにしたんですか?

既にA市は、包括的民間委託を実施しているんだ。その内容を段階的にウォーターPPPに移行することを目指しているよ。
これにより、下水道事業の運営管理を民間企業に委託しつつ、自治体としての責任を維持する形で導入を進める計画なんだ。

計画が立案された後は、市場調査を実施しているんだよ。これは、ウォーターPPP導入に関心を持つ民間事業者からのフィードバックを得るために重要なステップなんだ。

②市場調査ではどんなことが確認されるんですか?

主に次のようなことが確認されるよ。まず、民間事業者の関心と能力だ。ウォーターPPPに参加する意欲のある事業者の数や、その能力や経験が調査される。そして、リスク分担の方法についても話し合われる。

自治体と民間事業者の間で、リスクをどのように分担するかが重要なポイントなんだ。

その調査結果に基づいて、③民間事業者との対話をして、具体的な方法を決めるんですね。

A市では、複数の民間事業者に対してヒアリングを行ったんだ。そして、アンケートや対話形式で意見を収集した。特に、下水道事業に関する専門知識を持つ企業や、過去にPPP事業に携わった経験がある企業を中心に、現場での実務経験を持つ担当者との対話を重視したんだよ。 多くの民間事業者が、ウォーターPPPに対して高い関心を示したんだ。特に、長期契約による安定した収益が見込める点や、性能発注に基づく柔軟な運営ができる点が、事業者にとって魅力的だと評価されたんだよ。

②と③をサウンディング調査とも言うんだ。

過去にA市が包括民間委託を成功させた実績も、参加を検討する理由の一つになったんですね。アンケート結果をもとに、A市はどう対応したんですか?

そのフィードバックを基に、民間事業者が安心して参加できるように、契約の透明性安定性を強調する方針を固めたんだ。そして、参加条件を明確化し、事業者が持つ技術やノウハウを最大限に活用できるよう、性能発注の内容を具体化したんだ。

調査では、民間事業者がリスク分担について特に敏感であることが分かったんだ。

リスク分担が曖昧な場合、事業者が参加を見送る可能性が高いってことですね。A市はその懸念にどう対応しましたか?

そうだね。A市は、このフィードバックを受けて、リスク分担の詳細を明確にするために、契約書の中でリスクに関する条項を具体的に設定したんだ。

それなら事業者も安心してリスクを負える環境が整いますね。

プロフィットシェア制度についても、多くの事業者が高い関心を示したんだ。
特に、効率化によるコスト削減分を共有できるインセンティブが、事業者にとって大きなモチベーションとなるんだよ。

プロフィットシェア制度ってなんでしたっけ?

プロフィットシェアは、契約時に見積もった費用が、企業努力や新技術導入等で縮減した場合、縮減分を官と民で利益を共有できる仕組みだよ。

でも、それには適切な評価基準が必要ですよね。A市はどのように対応しましたか?

A市は、評価基準の透明性を確保することに注力したんだ。
具体的には、定量的な指標を設定して、その達成度に応じてシェア率を決定する仕組みを導入したんだ。

また、第三者による評価を行うことで、評価の公平性を担保し、事業者が信頼を持って業務に取り組める環境を提供したんだよ。

ウォータPPPで重要なのが性能発注
結果として達成すべきことを決める。A市では年間の陥没件数を〇〇件以下にする。苦情件数を〇〇以下にするなどを検討しているとのことだよ。

年間の陥没件数を満たせないとペナルティーとかあるのですか?

陥没件数の目標を満たせなくても、ペナルティーはないと言っていたよ。
その時は、どうすれば目標を達成できるかを一緒に考えて課題を解決していくということ。

このあたりが④契約準備で必要なことだね。


契約が締結されたら、ウォーターPPPは実際に⑤実施に移行するんだ。

実施後のちゃんとできているかの確認も重要ですよね。
どのように行われているんですか?

そうだね。まず、定期的なモニタリングと評価が行われるんだ。
これには、サービスの質や運営効率、コスト管理などが含まれるよ。
また、ウォーターPPPの導入に際しては業務の透明性が非常に重要なんだ。
住民や関係者がウォーターPPPの運営状況を理解できるよう、定期的な情報公開や説明会が行われているんだ。
そして、継続的な改善も必要で、契約期間中に発生する課題に対応しながら、サービスの質を向上させる取り組みが進められているんだよ。



ウォーターPPP(Public-Private Partnership)の導入は、多くの自治体にとって重要な課題です。特に、インフラの老朽化や災害リスクの増加、そして財政負担の軽減を図るためには、官民連携の新しいモデルが必要とされています。今回は、A市がどのようにしてウォーターPPPを導入検討しているかを詳しく解説します。


1. 計画段階

ウォーターPPP導入の第一歩は、A市の現状と課題を詳細に分析することから始まりました。老朽化したインフラの改修、災害リスクへの対応、財政負担の軽減など、解決すべき問題が明確にされました。これらの問題を解決するために、どのような官民連携のモデルが適しているかが検討されました。

A市では、包括的民間委託を段階的にウォーターPPPに移行することを目指しています。この計画により、下水道事業の運営管理を民間企業に委託しつつ、自治体としての責任を維持する形での導入が図られています。


2. 市場調査と3.民間事業者との対話

計画が立案された後、A市は市場調査を実施しました。これは、ウォーターPPP導入に関心を持つ民間事業者からのフィードバックを得るための重要なステップです。市場調査では、以下の事項が確認されました:

  • 民間事業者の関心と能力:
    ウォーターPPPに参加する意欲のある事業者の数や、その能力・経験が調査されました。

  • リスク分担の方法:
    自治体と民間事業者の間で、どのようにリスクを分担するかについての意見交換が行われました。

  • 契約条件と実施可能性:
    長期契約の適用範囲や、維持管理業務と更新業務の一体化など、具体的な契約条件についての協議が行われました。

市場調査の結果を基に、A市はウォーターPPPの導入に向けた具体的な方針を策定しました。この過程では、民間事業者とのオープンな対話が行われ、現実的かつ効果的な導入計画が練られました。


4. 契約準備

ウォーターPPPの導入にあたっては、長期にわたる契約の準備が必要です。A市では、契約の透明性と公正性を確保するため、慎重な準備が行われました。主な契約準備の内容は以下の通りです:

  • 長期契約の設定:
    ウォーターPPPでは、通常10年の長期契約が求められます。A市では、10年間の契約を基本とし、民間事業者が長期にわたって安定的に事業を遂行できるような契約内容を整備しました。

  • 性能発注とプロフィットシェア:
    ウォーターPPPでは、性能発注が重要です。結果として達成すべき性能や品質基準を設定し、その達成度に向けて業務をします。また、プロフィットシェア(利益共有)制度も導入され、民間事業者がコスト削減や効率化を進めるほど、利益を共有できる仕組みとしています。


5. 実施

契約が締結された後、ウォーターPPPは実際に実施段階に移行します。A市では、民間事業者が運営を開始するにあたり、円滑な引き継ぎが行われるよう、綿密な計画が策定されました。

  • モニタリングと評価:
    民間事業者が設定された性能基準を満たしているかどうかを監督するため、定期的なモニタリングと評価が実施されます。これには、サービスの質や運営効率、コスト管理などが含まれます。モニタリング結果は、契約の更新や改善のための基礎データとして活用されます。

  • 業務の透明性と住民参加:
    ウォーターPPPの導入に際しては、業務の透明性が非常に重要です。A市では、住民や関係者がウォーターPPPの運営状況について理解を深められるよう、定期的な情報公開や説明会が行われています。また、住民からのフィードバックを反映する仕組みも導入され、住民参加型の運営が推進されています。

  • 継続的な改善:
    ウォーターPPPは、契約期間中に発生するさまざまな課題に対応しながら、継続的な改善が求められます。A市では、民間事業者と協力し、運営中に発見された課題を迅速に解決し、サービスの質を向上させる取り組みを行っています。これにより、長期的なインフラ運営の安定性が確保されます。


3. 導入の課題と対策


ウォーターPPPの導入には多くのメリットがありますが、いくつかの課題も存在します。
A市では、これらの課題に対して適切な対策を講じることで、ウォーターPPPの成功を目指しています。
ここでは、その課題と対策について詳しく見ていきましょう。


ウォーターPPPでは、自治体と民間事業者の間でリスクを分担することが基本なんだけど、この分担方法が適切でないと事業がうまく進まないことがあるんだよね。

具体的にはどんなリスクがあるんですか?

例えば、災害リスクや運営コストの予測が難しい場合が挙げられるね。特に、災害リスクは予測が難しくて、発生した時の影響が大きいんだ。これらのリスクをどう管理するかが課題になるよ。

A市ではどうやって対処しているんですか?

A市では、契約段階でリスク分担を明確にして、各関係者がどのリスクを負うかをはっきりさせているんだ。それに加えて、定期的にリスク評価を行って、リスク状況を常に把握し、必要に応じて対策を見直しているんだよ。

リスクを誰が負うのかをはっきりさせないと、トラブルになりそうなので重要なことですね。

次に問題になるのが、長期契約による柔軟性の欠如だね。ウォーターPPPでは、通常10年の長期契約が一般的なんだけど、この長期契約があると、社会情勢の変化や技術革新に対して柔軟に対応するのが難しくなることがあるんだ。

それは大きな問題ですね。どうやって柔軟性を確保しているんですか?

A市では、契約に変更条項を明記していて、必要に応じて契約内容を見直せる仕組みを整えているんだ。これにより、社会情勢や技術革新に対応できるようになっているよ。また、契約管理体制を柔軟に運用して、予期せぬ事態にも迅速に対応できるようにしているんだ。

技術の進歩に対応していくのがとっても重要ですよね。



ウォーターPPPの導入には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も存在します。
A市では、これらの課題に対して適切な対策を講じることで、ウォーターPPPの成功を目指しています。
以下に、主要な課題とその対策について詳述します。


1. リスク管理の難しさ

ウォーターPPPでは、自治体と民間事業者の間でリスクを分担しますが、その分担方法が適切でない場合、事業がうまく進まない可能性があります。特に、災害リスクや運営コストの予測が難しい場合、リスク管理が課題となります。A市では、このリスク管理の難しさに対処するため、以下のような対策を講じています:

  • リスク分担の明確化:
    契約段階でリスク分担を明確に定めることにより、各関係者が自身の責任範囲を理解し、適切に対応できるようにしています。

  • 定期的なリスク評価:
    契約期間中に定期的なリスク評価を行い、リスク状況を把握し、必要に応じて対策を見直すことで、リスク管理を強化しています。

2. 長期契約による柔軟性の欠如

ウォーターPPPでは、10年の長期契約が一般的ですが、この長期契約が柔軟性を欠く原因となることがあります。特に、社会情勢の変化や技術革新に対応するためには、契約内容の見直しが必要になる場合があります。A市では、この課題に対処するため、以下のような取り組みを行っています:

  • 変更条項の明記:
    契約において、社会情勢や技術革新に対応するための変更条項を明記し、必要に応じて契約内容を見直せる仕組みを整えています。

  • 柔軟な契約管理:
    契約期間中に発生する予期せぬ事態に対応できるよう、契約管理体制を柔軟に運用し、迅速に対応できるようにしています。



4. ウォーターPPPについての説明


ウォーターPPPの導入において、契約の長期化が非常に重要な要素なんだ。通常、ウォーターPPPでは10年の長期契約が一般的だよ。

そんなに長い期間の契約になるんですね。それってどんなメリットがあるんですか?

長期契約の目的は、自治体と民間事業者が双方にとって持続可能なパートナーシップを築くことなんだ。短期契約だと、民間事業者が十分な投資を行うインセンティブが低くなってしまうし、サービスの質も短期的な目標に左右されがちなんだよ。

長期契約だと、民間事業者も長期的な視点でインフラの維持管理や改善に取り組めるってことですね。

次に重要なのが、性能発注だね。これは、ウォーターPPPにおいて成果を重視する発注方式なんだ。具体的な業務内容ではなく、達成すべき成果や性能を基準として契約を行うんだよ。

それだと、民間事業者は自分たちで最適な方法を選択して業務を遂行できるわけですね。どんなメリットがあるんですか?

性能発注の最大の利点は、民間事業者に創意工夫の余地を与え、効率的かつ効果的にサービスを提供できるようにする点だね。従来の仕様書に基づく発注方式では、自治体が詳細な作業内容を指定してしまうから、民間事業者が独自のノウハウを活かす余地が少なくなるんだ。

それに対して、性能発注では民間事業者が最も効率的な手段を選択できるから、コスト削減やサービスの質の向上が期待できるんですね。

その通り。A市では、陥没件数、苦情件数、下水道処理施設の放流水質やエネルギー消費量など、具体的な性能基準を設定しているんだ。民間事業者は、これらの基準を達成するために最適な技術や手法を選択することが求められるんだよ。

また、維持管理と更新の一体化も重要なポイントだね。これは、下水道インフラの維持管理業務と、必要な更新作業を一体的に管理・運営する手法なんだ。

維持管理と更新作業を一体化することで、どんな効果が期待できるんですか?

一体化することで、維持管理のデータを活用して最適なタイミングで更新作業を行うことができるんだ。
これにより、過剰な修繕や無駄な更新を避けて、インフラのライフサイクルコストを最小限に抑えることができるんだよ。

維持管理と更新を一体化することで、運営の効率化も期待できるんですね。

その通り。下水道施設の維持管理データを活用して、最適な更新計画が策定出来るんだ。




4.1 契約の長期化

ウォーターPPPの導入において、契約の長期化は非常に重要な要素です。通常、ウォーターPPPでは10年の長期契約が一般的であり、これにより安定したサービス提供と、民間事業者による長期的な投資の回収が可能となります。

長期契約の目的は、自治体と民間事業者が双方にとって持続可能なパートナーシップを築くことにあります。短期契約では、民間事業者が十分な投資を行うインセンティブが低くなり、また、サービスの質が短期的な目標に左右される可能性があります。これに対し、長期契約を結ぶことで、民間事業者は長期的な視点でインフラの維持管理や改善に取り組むことができ、結果としてサービスの安定性と質の向上が期待されます。


4.2 性能発注

性能発注は、ウォーターPPPにおいて成果を重視する発注方式です。この方式では、具体的な業務内容ではなく、達成すべき成果や性能を基準として契約を行います。民間事業者は、この性能基準を満たすために最適な方法を選択し、業務を遂行します。

性能発注の最大の利点は、民間事業者に創意工夫の余地を与え、効率的かつ効果的にサービスを提供できるようにする点です。従来の仕様書に基づく発注方式では、自治体が詳細な作業内容を指定するため、民間事業者が独自のノウハウを活かす余地が少なくなります。これに対し、性能発注では、民間事業者が最も効率的な手段を選択できるため、コスト削減やサービスの質の向上が期待されます。

A市では、ウォーターPPPの導入にあたり、陥没件数、苦情件数、下水道処理施設の放流水質やエネルギー消費量などの具体的な性能基準を設定しています。これにより、民間事業者は、これらの基準を達成するために最適な技術や手法を選択することが求められます。


4.3 維持管理と更新の一体化

維持管理と更新の一体化とは、下水道インフラの維持管理業務と、必要な更新作業を一体的に管理・運営する手法です。これにより、インフラの寿命を延ばし、長期的なコスト削減ができます。

通常、インフラの維持管理と更新作業は別々に行われることが多いですが、一体化することで、維持管理のデータを活用して最適なタイミングで更新作業を行うことが可能になります。これにより、過剰な修繕や無駄な更新を避け、インフラのライフサイクルコストを最小限に抑えることができます。また、維持管理と更新を一体化することで、技術継承の強化や運営の効率化が図られます。

A市では、ウォーターPPPの導入により、下水道施設の維持管理データを活用し、最適な更新計画を策定することを目指しています。具体的には、センサーやIoT技術を活用してリアルタイムで施設の状態をモニタリングし、そのデータに基づいて更新作業を実施します。さらに、維持管理業務と更新作業を一体的に管理することで、LCC(ライフサイクルコスト)の最小化を図ります。このアプローチにより、長期的なコスト削減とインフラの耐久性向上が期待されています。




5. ウォーターPPPを導入するメリット


ウォーターPPPを導入することで、いろいろなメリットが得られるんだよ。まずは「国費支援の確保」について話そうか。

国費支援の確保って、どういうことですか?

ウォーターPPPを導入すると、国からの支援を効果的に引き出すことができるんだ。特に大規模なインフラ整備や更新に必要な資金を確保する上で、国費支援は非常に重要なんだよ。A市も、このプロジェクトを通じて国費支援を受けることで、財政的な負担を軽減し、効率的な下水道事業運営を目指しているんだ。

財政困難の中、補助金は助かりますね。


5.1 ウォーターPPPにおける「官側」のメリットとデメリット

メリット

  • コスト削減と効率化: 民間企業の技術力を活用することで、公共事業のコストを削減し、運営の効率化が実現。
  • リスク分担: 運営や技術、財政リスクを民間事業者に移転し、官側の負担を軽減。
  • 長期的なインフラ管理: インフラの長期維持管理により、寿命を延ばし、コスト削減が可能。

デメリット

  • 管理・監督の複雑化: 複雑な長期契約の管理に多くのリソースを必要とし、監視コストが発生。
  • リスク分担の不確実性: 不適切なリスク分担が予想外のリスクやコストを引き起こす可能性。
  • 契約期間中の柔軟性の欠如: 社会変化や技術革新への迅速な対応が困難。
  • 市民からの信頼の問題: 民営化に対する不安が政治的反発を招くことがある。
  • 初期導入の複雑さとコスト: PPPの導入には時間とコストがかかり、初期の不備が長期的な問題に。

ウォーターPPPにおける民側のメリットとデメリット

メリット

  • 安定した収益の確保: 長期契約により安定した収益源が確保され、持続的な事業運営が可能。
  • 新市場への参入機会: 公共部門のインフラ市場に参入することで新たな市場機会が創出。
  • 技術・ノウハウの活用: 自社の技術を活かし、高品質なサービス提供が可能。
  • インセンティブによる利益拡大: 性能発注やプロフィットシェアで利益を拡大するインセンティブがある。
  • ブランド力と信頼性の向上: 公共事業での実績が他のビジネスチャンスに繋がる。

デメリット

  • リスクの負担: 運営や技術リスクを多く負担し、顕在化すると損失の可能性。
  • 初期投資の負担: 初期設備投資が企業にとって財務的な負担となる。
  • 長期契約による柔軟性の欠如: 社会変化や技術革新への迅速な対応が困難。
  • 管理・運営の複雑さ: 複雑な契約内容の管理がコストや労力を増加させる。
  • 公共の視線によるプレッシャー: 社会的責任が求められ、ブランドイメージに影響を与える可能性。



今回は、ウォーターPPPの流れについて説明をしたけれど、

結局どういう維持管理をしていけば良いかはわからないよね。


やっぱりスクリーニング(点検と調査)これが肝心なんだと思うよ。

これらの記事を読んでほしいな。

点検と調査(1)



下水道点検と調査の基礎知識



スクリーニングとは何か?(セミナー)



スクリーニング点検の実務(セミナー)



これらを見れば、スクリーニングと点検がわかりますね。

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