下水道維持管理の新時代:アセットマネジメントとストックマネジメント徹底解説 (第19話)

2021年12月22日水曜日

下水道の課題 下水道の基礎知識

管 とおる



みかんちゃん、前回の修行のコスチュームがとても似合ってたよ

→【第18話】目指せ名人!つまり抜き入門!!←

諏訪 美管

ちょっとはしゃぎ過ぎちゃいました。清掃機器を振り回したら危ないですよね。反省です。
その反省として、今日はちょっとだけ難しい話をしようかな。下水道の維持管理で重要な
【ストックマネジメント】【アセットマネジメント】のお話を!
ひえー。 頭を切り替えて勉強モードにします。








下水道業界の課題を知ろう!


みかんちゃん。一番最初に教えた下水道が直面している課題はなんだか覚えているかな?
はい。【ヒト】【モノ】【カネ】の問題です。
下水道はどんどん古くなっているのに、管理する職員が減っていて、また直したりするお金もないんですよね。
その通り!皆さん、もし、おさらいしたいければ0話を見てみましょう👀
→【第0話】 ~ 諏訪美管 :下水道の世界に足を踏み込む ~ ←
??? 
今、誰に話しているのですか?
僕たちの会話は、何千人の人が聞いているんだよ。
みかんちゃんのボケも全て全国展開(笑)
ひえーーーーーーー
とおるさん、はやく真面目な話をしましょう(汗)



下水道業界の課題

下水道は人々の生活の中で止めてはいけない重要な施設です。
現在、日本の下水道の総延長は48万㎞!
この膨大な下水施設を持続的に運営していくことが必要ですが、現在の下水道業界を悩ませている大きな3つの課題があります。
  1. ヒト ・・・下水道職員や技術者の減少
  2. モノ ・・・劣化の進む下水道施設の増大
  3. カネ ・・・厳しい財政や人口減少による料金収入の減少等

これだけ問題があっても下水道は止めてはいけないし事故も起こしてはいけない、なんとか管理していかないといけないよね?
じゃあ、効率的・効果的に維持管理を行うにはどうすればよかったかな?
はい!まずは簡易的に広い範囲の管を点検するスクリーニングをして、悪いところはしっかり調べる詳細調査をするんですよね\(^o^)/
→下水管の点検と調査について←
そうそう!

スクリーニングはストックマネジメントの一部になるんだ。その前段としてアセットマネジメントをしっかり行う必要があるんだよ。
難しい言葉で抵抗があるかもしれないけど大丈夫!わかりやすく説明するからね!




ストックマネジメントとアセットマネジメント



みかんちゃん問題

下水でいうストックてなんだかわかるかな?
杖?
それはステッキ(笑) すてっきなボケだね


【ストック】

ストックとは既存の構造物や施設の事で、道路や鉄道で言えば道路橋やトンネル、空港で言えば滑走路など。下水道で言えば人孔や下水管や処理場のことを指します。ストックマネジメントは施設を有効に活用し、長持ちさせる体系的な方法です。(一つ一つのものが系統に従ってまとまっているさま)

なるほど~!施設や構造物のことなんですね!

では、アセットってなんだかわかるかな?
アセ、アセ、アセ(・_・;)?

アセって困っているね。 アセットっていうのは資産や財源、つまりお金の事なんだ。
【アセット】

アセットとは資産や財源の事で、下水道で言えば下水道施設を維持管理するための資金のことを指します。なお、経済・金融界での「アセット」は、現金、預貯金、有価証券、などの資産があてはまり、投資家に代わってお金を管理する投資信託もアセットマネジメントの一種になります。

アセットマネジメントは目的に対して効率よくお金を運用管理すること。

私がもらったお給料を どう使うか、どう管理するかってことですね。




アセットマネジメント


下水道維持管理事業を運営するためには必要な費用を考慮する必要があり、アセットネジメント、つまり財政管理をしなければなりません。
みかんちゃん、もしお給料をもらって、支出の方が多かったらどうする?
う~ん。節約したり、今すぐ必要じゃない買い物は控えたり、貯金崩したりするしかないですよね。
そう、まさにそれがアセットマネジメント!
みかんちゃんの言った、『今すぐ必要じゃない買い物を控える』っていうところがこの後特に大事になってくるから覚えておいて! じゃあ、下水道の管理費で例えると支出額の方が多かったらどうする?
下水道の使用料をあげたり、調べる箇所を減らしたり?
でも、調べる箇所を減らしたら事故が起きちゃいますよね?
下の左の図
収入は減っているのに、支出は増加傾向にあるんだ。 このままの状況では、収支のバランスがとれていないから、事業を継続的に運営することができないよね。
そこで右の図のように収入と支出をバランス良く計画を立てることがアセットマネジメント!
でも、バランス良くするにはどうしたらいいと思う?

やはり、使用料金の値上げじゃ~~~
皆の者、年貢を納めよ~!!!

いやそれ、住人の方々からクレーム来るやつー!!



どうやって収支のバランスをよくするの?

下水道施設は、明治に建設されてから現代までに膨大な額の投資をされてきました。 そのお金を使って下水処理場や48万kmの下水道が作られ、 そのおかげで、現在では川や海がきれいに浄化されてきました。

きれいな川や海とか、きれいな水洗トイレも現代人にとっては生まれた時からの当たり前でしょ?
豪雨があっても災害は少ないし。

確かに、きれいな水も水洗トイレも当たり前な感覚はありますね~。
でも、それは下水道があるおかげなんだけど、地下の見えない場所で機能しているから、多くの人は見えないものの維持のためにお金をかけることに抵抗を感じちゃうんだよ~。
昔は汚い水が日常的に目に見えていたから、自分たちの町にも下水道を整備しよう!っていうモチベーションが高かったんだと思うんだよね。

でも下水道が機能しなくなったら川や海も汚いし大雨の時も大変なのに。
じゃあ足りないお金はどうしたらいいんでしょう。

支出を抑えるには、施設を統合して作業を効率化したり、省エネや自動運転技術を導入してコスト削減したりね。
税金や料金値上げには様々な課題があるから、そこで支出を抑えるために一番重要になってくるのがストックマネジメントなわけ!



ストックマネジメント

ストックマネジメントはみかんちゃんも知っての通り、まずは点検・調査、つまりスクリーニング調査をすること!
それはなぜ?
えぇーと、下水管の寿命は50年と言われているから、下水道の健康診断をして日本中のたくさんの管の中から壊れそうな管と元気な管をいち早く調べるため!?
その通りだよみかんちゃん!

でも、どうしてそれが支出を抑えることに関係するんですか??
ふっふっふっふ
さっきみかんちゃんが収入より支出が多かったら『今すぐ必要じゃない買い物を控える』って言っていたよね?
これはスクリーニング調査も同じことなんだよ!
す、すみません、もう少し分かりやすくお願いいたします!(汗)
一般的に下水道管きょの耐用年数は約50年だけど、劣化の状態はその場所や環境によって大きく変わるんだ。
だから、50歳の下水管でも、病気の管もいれば20代くらい元気な管もいるわけ!
つまり、スクリーニングで壊れそうな管を見つけて、収入のバランスを取りながら、早く直した方がいい管はどれか優先順位をつけていくんだ!
なるほど~!!今の予算ですぐ直さなくても安全な下水管にはもうちょっとだけがんばってもらうってことですね!
そう。だから、まだ50歳より若い管でも腐食が進んでいる場合は50年経つ前に修繕改築されるんだよ!
ちなみに、ストックマネジメントは、下水道が作られた昔から現代まで徐々に進化してきているんだ。


 

現代までのストックマネジメントの移り変わり


①事後保全
事故や災害が発生して壊れたら施設を修繕・改築する
※どれだけ壊れるかわからないから予算の計画がたてられない。

②時間計画型保全(その①)
数年間の計画をして損壊が発生する前に改築する
 ※数年の予算が立てられるがその後は不明

③時間計画型保全(その②)
耐用年数一律で検討した長期的な改築計画    
※建設のピークに合わせて予算もピークになる。

④状態監視保全
施設診断等に基づき現実的な改築時期を見極めて策定する。
※均等な予算の計画がたてられる!




今はこの④の方法でストックマネジメントを実施しているんだ。
この方法だと将来の予算が明確になるんだよ。

ふむふむ。そのためには管が健康かどうかを継続的に確認することが必要だから、
やっぱりスクリーニングで短期間で広域的にたくさんの管の健康診断をすることは大切ですね!!

そうそう!
『この下水管は壊れかけている。こっちの下水管は正常に機能しているけど、耐用年数は超えている。
でもお金はこれだけしかない!さぁ、このお金を使ってどちらをいつ直す!?』って計画することね!

なるほど~!そうやって収入と支出のバランスを取るんですね~
よくわかりました。
その他にも広域化とか統廃合、省力化、ダウンサイジング、スケールメリットの活用などいろいろな取り組みがあるんだけど 今日はカタカナがいっぱいで疲れただろうから次回は、このいろんな取り組みについて説明するね(笑)
なんか、頭がパンクしそうですけど。。
よろしくおねがいします!!
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