下水道の効率化を目指す:スケールメリットによる広域化と共同化の探求!(第20話)

2022年1月26日水曜日

下水道の課題 下水道の基礎知識

管 とおる

 

みかんちゃん、前回は難しい話だったけど、アセットマネジメントとストックマネジメントについてわかったかな?

→【第19話】ストックマネジメントとアセットマネジメントって?←

諏訪 美管

はい♫ 限られた管理費に対して管理しなきゃいけない下水道施設がたくさんあるから、収入と支出の計画をきちんと立てて下水道を安全に管理しましょうって事ですよね。
そのとおり(^^)
前回は管理費に合わせた計画の話をしたけど、今日はその管理費を節約するお話!
管理費の収入を増やすにも限界があるからその対策として、無駄をなくすことが必要になってくるんだ。  
なるほど~! でもどうやって無駄をなくすんですか?
その方法はいろいろあるけど、今回は広域化や統廃合などスケールメリットの効率化について説明するね。  
す、すけーるめりっと?? また難しい言葉がっ!!







スケールメリットとは


みかんちゃん、念のため聞くけどスケールメリットって知ってる?

お察しの通り、知りません(-_-;)

スケールメリットは、簡単に言うと同じ種類のものや同じ作業を1か所に集めることで、効率良くコストが抑えられることを指すんだ!
ビジネストークでは耳にすると思うから覚えておくといいよ!

スケールメリット

スケールメリットとは同種のものを多く集めることにより、単体よりも多く生産することができ、大きな結果が出せることを指す和製英語です。
スケールメリットの効果
経営効率化
・作業内容が重複している複数のグループがあれば、経営統合することで同じ作業を1つの場所で行うことができる。
・同じ作業の繰り返しによる作業速度や作業精度の向上
・組織内に蓄積されたノウハウにより人材育成やコストパフォーマンスの向上

コスト削減
・大量の商品を一度にまとめて仕入れることによる仕入れコストの削減
・広告費や採用コストの削減
・運送コストや物流コストの削減


例えば、原価100円のおもちゃを作る製造機を100万円で買ったとするよね?
おもちゃを1個だけ作ると生産費は機械代も含めて1,000,100円。100個しか作らないと1つあたりの生産費用は約1万円、でも100万個作ると1つあたり約100円で作れるんだ!
つまり多ければ多いほど生産コストが抑えられるわけ!

なるほど~! それぞれのおもちゃ会社で少ない数を作らずに、高い機械は1つ買って、そこでたくさんの会社のおもちゃをまとめて作っちゃうってことですね!

そう! 他にも飲食産業なんかでは、新しいメニューに合わせてそれぞれのお店で広告を作ったりするから広告費もかかるでしょ? でも経営統合すれば広告も同じものを使えるし、お金も時間もかなり節約できるわけだよ!

なるほど~! 生産系の企業ではなんとなく想像がつきました!
でも、下水道業界のスケールメリットって一体何なんでしょうか??


僕たちの業界で言うと広域化とか共同化っていうのがスケールメリットになるんだよ。




広域化と共同化


みかんちゃん、下水道はそれぞれの市町村が管理しているから人口が多い場所と少ない場所によって下水道施設の数や処理場のキャパシティも違うし、もちろん管理費も市町村によって大きく差がでるんだ。
そうか、考えてみたらそうですよね!
過疎化がどんどん進んでいる地域では管理費とか大丈夫なんでしょうか~!?
そう、そこで将来を見据えた1つの方法として、広域化・共同化と言われる対策が進められているんだよ!
簡単に言えば市町村の枠を超えて下水処理区域を広くして共同で管理しちゃおうってこと。


広域化・共同化

下水道事業は、人口減少や財政の逼迫(ぴっぱく)といった社会情勢の変化、施設の老朽化や技術職員の減少など、厳しい課題に直面しています。
このような中、経営の持続可能性を確保するため、各自治体では、下水道事業のさらなる合理化対策として広域化・共同化への取り組みが進められています。
広域化・共同化とは複数の市町村等の枠を超えて 
  • 施設や処理地域の統合 
  • 下水汚泥の共同処理
  • 維持管理業務の共同化

などをすることで、効率的な運営を行うことです。

統合化すると、さっきのおもちゃ工場の例のようにコスト削減できるんですか??
そう! これまでそれぞれやっていた同じ作業をひとつの場所にまとめた方が、人件費や設備費用も削減できるうえに作業の質や効率も上がるんだ!
作業の質や効率も~!?
そう! 同じ作業を繰り返し行うことで作業速度も上がるし、経験値も上がるから人材育成にもつながるんだよ!

それはすごい!!
ところでどうやって広域化・共同化するんですか?


施設や処理地域の統合


みかんちゃん、一つの例だけど、下水道は同じ市町村の中でも下水道と農業集落など区分けがあってそれぞれ別々の処理をしてるんだ。
へぇぇ~知らなかったです!!
そこで、下の図のように、 農業集落の処理場を廃止して、隣の下水道に合流させてその下水道の処理場で処理しちゃう。こうすることで広域化・共同化ができるってわけ!



なるほど~! これなら処理場はひとつで済みますもんね!

これと同じように、複数の市町村、主に小規模な市町村が処理場をひとつにして共同で利用したり管理したりすることもあるんだ!
そんな事しても平気なんですか?
もちろん、簡単にはいかないよ。人口も下水道料金も経営の状態はそれぞれの市町村で様々だから、都道府県が主体となって連携してとりまとめをするんだ!
でもこれがうまくいくなら、処理場の運転管理費用も1つでいいし、技術者不足の解消もできちゃいますね。
うんうん。そのとおり♫
実は処理場の管理の他にも広域化・共同化することによっていろんなスケールメリットがあるんだよ。


下水汚泥の共同処理や事務作業の統一



みかんちゃん、前に下水処理場で出た汚泥から再生資源を作ってるって話をしたの覚えてるかな? 【第4話】汚水がきれいな水に!~下水処理場のしくみ(水再生センター)~

はい! たしか下水処理で発生するガスで発電したり、汚泥を使ってセメントや肥料を作ってるんですよね! これはコスト削減につながりそうですよね~!!
…と思うでしょ?? でも実は再生エネルギーを作るための設備がまずは必要だから、処理する汚泥の量が少ないと、設備代の方が多くかかってしまって、元が取れるのに何年もかかってしまう。処理するものが多ければプラスになるけど、たくさんのエネルギーを作らないと、無駄な施設になっちゃうよね。
さっきのおもちゃ工場の原理ですね!! なるほど! だから広域化して、1つの施設で処理をしたほうが効率的になるんだ~(*´∀`*)
その他にも事務作業の統一もできるんだ。A市、B市、C市でそれぞれが使用料の徴収や会計処理、台帳管理を個別に行うより、共同化して事務処理をしたほうが職員数も減らせて効率も上がるんだよ。
わあ~~ なんか良いことばかりですね♫
良いことばかりに見えるけど、課題はたくさんあるから。広域化って進みにくいんだ。
そうなんですか??
  では、さっとあげるよ。


広域化の課題


①施設水準の統一

統合する施設の老朽度合いが異なる場合、適切に更新・補修を行いレベルの統一を図る必要がある。
つまり、ストックマネジメント・アセットマネジメントをしっかり行わないといけない。

②維持管理レベルの統一

 統合前における各事業間での点検・調査・清掃等の頻度が違う場合は、統一を行うことが必要となる。

③施設の最適化

事業統合だけでは、施設数が増大するため将来を見据えた統廃合を的確に行う事が必要となる。

④料金差の是正

事業体間で料金が異なる場合、料金アップするエリアがあるときは住民説明が必要になり財政収支計画の策定等が必要となる。

なるほど~。これまで市町村ごとにやり方の違ったものを統合するんですもんね。やり方が変わることで少なからずクレームはあるだろうし、これらの課題を解決するのは、一筋縄ではいかなそう(・_・;)
それに施設の統合で大事なことは未来を見据えること。今だけ良くても仕方ないから、将来の人口予測がとても大事になるんだよ。
そうか! 大きな施設を建てたのに人口が少なくなったり、逆に人口が増えていくのに小さい施設では将来運営出来ないですもんね。
課題がいっぱいだー-!!

そうそう。だから都道府県が主体となって共同化する市町村と短期的~長期的に計画を進めていくんだよ!

みんなが下水道の大切さを理解して足並みそろえて共同化できるといいですね!

下水道は地下に埋まって見えないし、みんな使ってる実感がわかないのが一番の課題かもね。
だから、情報を発信して、下水道の役割や大切さを皆さんに理解してもらいたいってのが僕の気持ち!

みかんちゃも、下水道Loveになってきたのかと思ってるよ。
はい!! 私は美管というの名のもと、日本中の管を美しくするのが最終目標ですから! いろいろ勉強して少しでも下水道の大切さを広めていきたいと思ってます。
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