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下水道処理場の仕組みをやさしく解説|汚れた水がきれいになるまで(第4話)

2021年3月5日金曜日

下水道の基礎知識/下水処理場について

下水道処理場の沈殿池と曝気槽を上空から撮影した全景。汚水処理工程の配置と浄化プロセスがわかる施設の航空写真

管 とおる

みかんちゃん、前回はお風呂の水がどうやって下水処理場にたどり着くかのお話をしたね。
→前回の話【公共ますから下水処理場へ】←
今日は下水処理場でどうやって汚水を綺麗にしているかを説明するね。

諏訪 美管

はい!よろしくおねがいします(^^)

その前に、みかんちゃんにうれしいお知らせがひとつ。

え? なんですか?

みかんちゃんの名刺が出来たよ。ハイ。
これで、営業活動ができるようになったね。
わー❤❤❤ 嬉しい~!
これからもしっかり勉強して【KANMAGA】を通して下水道のことを世の中に広めていきますね。




下水処理場とは?汚い水がきれいになるまで

家庭の中で使われている様々な水は排水管を通して下水管に流れていき、
水再生センター(下水処理場)にたどり着きます。
水再生センターでは数種類のプールのような池に汚水を順番で通していき、汚水を綺麗にしていきます。

家庭のトイレやキッチンから出た汚水が排水管を通って下水道管へ流れ、下水処理場へ運ばれていく仕組みを示すイラスト
下水処理場の処理施設を示すイラスト。複数の水槽で汚水を沈殿・処理する様子を上から見た図

下水処理場では下水がいくつかの【池:施設】を通ってきれいになる 7つの過程を簡単に説明するね!

下水処理場のスクリーン工程を示す図。格子で大きなゴミを取り除く仕組みをイラストで説明した図解
下水が処理場に着いて最初に行われるのは、大きなゴミを取り除くこと。
左図のようにスクリーン(格子状の柵)で大きなゴミを取り除き、スクリーンを通過した水を次の【池】に送るんだ。

下水処理場の沈殿池の仕組みを示すイラスト。重い汚れが沈み、上澄み水と分離される様子を表した図

この【池】では下水の流れを止めて、ゴミを沈めるんだ。
そして、下に沈んだゴミをポンプで取除いて下水を次の【池】に送るんだ。

下水処理場で使われる活性汚泥のイラスト。微生物が汚れを分解している様子を分かりやすく描いた図
この【池】で大量の微生物が含まれた泥を加えるんだ。 加えられた微生物は下水の中の汚れをどんどん食べてくれるんだよ。

下の動画を見ると食べているところが分かるよ。

下水処理場の沈殿池を表したイラスト。汚れが底に沈み、上ずみ水がきれいになる様子
そして汚れをたくさん食べた微生物たち重みで下に沈んでいき、
上にはきれいになった透明な水が残るんだ。

下水処理のろ過工程を示すイラスト。細かいフィルターを水が通り、小さなごみが取り除かれる様子
透明になった水をすごく細かなフィルターを通して、 ここまでで取り切れなかった小さなゴミを全部取り除くんだよ。

下水処理の消毒工程を表すイラスト。薬品により細菌が死滅し、きれいになった水が流れていく様子
ここまで来た下水は見た目がとってもきれいになっているけど、
ばい菌や細菌が残ってるから最後の【池】で消毒をするんだ。

下水処理場で浄化された水が川へ放流される様子を描いたイラスト
そしてきれいになった水は海や川へ放流されるんだよ!

へぇぇぇ~~~~!!
(みかんちゃん用に)すごく簡単な解説になっちゃったから、 下水処理場の全体像を見ながら復習してみよう!
・・・・Σ( ̄ロ ̄lll) 

「ネズミくんと学ぶ!下水処理のしくみ(7つのステップ)」と題された学習漫画風のイラスト。白いネズミのキャラクターが、下水がきれいになるまでの工程を順を追って案内している。
①「スクリーン」では、ネズミが網で水面の大きな空き缶や枝などのゴミを取り除いており、「大きなゴミを網で取るよ!」という吹き出しがある。青い矢印が次の工程へ続いている。
②「沈殿」では、水槽の中で濁った水からゴミが底に沈殿していく様子が描かれ、「ゴミを下に沈めちゃう!」と説明している。
③「微生物処理」では、ネズミが色とりどりの擬人化された微生物と一緒に水槽の中で泳いでおり、微生物が汚れの粒子を食べている。「微生物さんが汚れをパクパク食べるよ!」と説明している。
④「沈殿」では、水槽の上層がきれいな水になり、下層に微生物の塊である泥が沈んでいる。「きれいな水と泥に分かれるね!」と説明している。(※画像では⑤の工程が省略され、④から⑥へ番号が飛んでいる)
⑥「消毒」では、ネズミが消毒剤の入った瓶を持ち、紫外線ランプが照射されている水槽の中で、ばい菌のマークに×印がついて消えていく様子が描かれている。「最後はばい菌をやっつけるぞ!」と説明している。
⑦「放流」では、土管からキラキラと輝くきれいな水が川に流れ込み、魚が元気に泳いでいる。ネズミも川の中で嬉しそうにしており、「きれいになった水を川や海へ戻すんだ!」と説明している。全体の工程は大きな青い矢印で連結され、左上から右下へと流れるように配置されている。


下水処理のしくみをやさしく解説(5つの工程)


汚水が下水道管を通って最終的に辿り着く下水処理場。
沈殿池、最初沈殿池、反応タンク、最終沈澱池、消毒設備を通ってキレイに処理されます。

下水処理場のしくみを説明する図。沈砂池、最初沈殿池、反応タンク、最終沈殿池、消毒設備を通って汚水が浄化され、きれいな水として放流される流れを示す
沈砂池・・・大きなごみを取り除く。
最初沈殿池・・・時間をかけてゆっくり流すことで、汚れを沈殿させる。
反応タンク・・・微生物の入った泥を入れて6~8時間かき混ぜる。
→汚れが微生物によって分解されたり微生物に付着し、沈みやすいかたまりになる。
最終沈殿池・・・反応タンクでできた泥のかたまりを3~4時間かけ沈殿させ、上ずみと汚泥に分離。
→上ずみは処理水として消毒設備へ!
消毒設備・・・処理水を塩素消毒して大腸菌等を消毒してから、川や海に流す。


そしてまた川や海の水が蒸発して雨となり、川へながれ一部が水道水となり、お風呂で使われます。 これが水の循環。

下水道も水の循環の一部になっているのです。


それにしてもこんな小さな生き物たちが水をきれいにしてくれていたなんて、びっくりしました!
でしょ!微生物がいる反応タンクは処理場のメインイベント!
これは【活性汚泥法】と言って標準的な方法なんだ。

活性汚泥法


活性汚泥法とは酸素を必要とする好気性微生物 に下水の汚れ(有機物)を処理させてきれいにする方法です。
 
下水処理で働く微生物を表したキャラクター風のイラスト。単細胞生物をシンプルな線で描いた図
好気性微生物はズーグレアシュードモナスバチルスなどの細菌が主体であり、 ツリガネ虫クマムシワムシなどの原生動物なども含まれます。

ズーグレア
シュードモナス
バチルス
ツリガネ虫
クマムシ
ワムシ
原生動物
微生物が汚れを食べたり、細かい汚れが微生物の体にくっつくことで重くなり沈んでいきます。
そうして微生物が含まれる活性汚泥と上ずみに分離され、 上ずみは処理水に、沈んだ活性汚泥の一部は再び反応タンクに戻され活躍します。

へぇぇぇ~~~~
汚水をきれいにしてくれる微生物ってこんなにいるんだぁ。
こんな可愛いのもあるよ。微生物カード(*^^*)

汚水を綺麗にするにはこれらの生き物たちの力が必要なんだけど、多すぎても少なすぎてもダメなんだ。
え!てっきり、多ければ多いほど早くきれいになるのかと思いました!
これらの生き物も僕らと一緒で酸素を必要としているから多すぎると酸素が足りなくなっちゃうんだ。
下水処理場では【生き物の量】【酸素の量】を細かく調整してるんだよ。
そして彼らのおかげもあって下水はこんなにきれいに変化するんだよ。
①下水
②微生物を混ぜたところ
③沈めたところ
④ろ過したところ
①下水 ②微生物を混ぜたところ ③沈めたところ ④ろ過したところ
わー、すごい!!
汚れた水がこんなに透明になるんだぁ!
④の水なんかもう飲めそうですね!
いやいや、綺麗に見えるけどばい菌や細菌が含まれているから、まだ飲めないよ(汗)
このままでは、川に流せないから塩素で消毒するんだ。
でも塩素って害はないんですか?
塩素はプールや水道水にも入っているから少しなら安全と言われるてるけど、 やっぱり薬品だから少なからず害がある。
だから、細菌を【紫外線】とか【オゾン】とか薬品を使用しないで消毒する施設も増えてるんだ。
薬品を使わない方が身体にも環境にも良さそうなイメージです!
でもそういった特別な方法にはコストがねぇ、、、。
下水処理施設は県や市町村が管理してるから維持費や更新費がかかる。 みかんちゃんの入社初日にも下水道は大変なんだって説明したけど下水処理場も同じなんだよ。
「下水処理の仕上げと課題:消毒とコスト」と題された図解イラスト。左側の「消毒のプロセス」では、見た目は透明な処理水を塩素消毒または紫外線・オゾン消毒で安全にして川へ放流する流れを、男女のキャラクターが説明している。右側の「コストの壁と維持管理」では、新しい消毒方法の導入にはコストの壁があることや、施設の維持・更新費が自治体の大きな負担になっていることを、困った表情のキャラクターと共に示している。
出た~💦またお金の問題ですね(・_・;) でも下水処理場がなくなっちゃったら、ものすごく大変なことになりますから維持していかねばですね!



下水処理場では、街の大きさや流れてくる下水の量に合わせていろいろな処理方式が使われているんだ。
ここでは、代表的な酸素活性汚泥法オキシデーションディッチ法を、できるだけ簡単に説明するね。

● 酸素活性汚泥法とは?

  • 反応タンクに純酸素を送り込み、微生物を強く働かせる方式
  • 微生物の処理能力が高く、小さな敷地でも設置できるのがメリット。
  • ただし、酸素を送り続けるため電気代が高く、維持費がかかるのが弱点。

● オキシデーションディッチ法とは?

  • 「流れるプール」のような無終端水路で汚水をゆっくり循環させながら処理する方式。
  • 処理が安定し、水質の変化にも強いため管理がしやすい。
  • 一方で、水路が大きいため広い敷地が必要になる。
下水処理方式である酸素活性汚泥法とオキシデーションディッチ法の違いを示したイラスト。処理フローと長所・短所がキャラクター付きで分かりやすく描かれている図
他にもいろいろあるから様々な処理方法を参考にしてみると良いよ。
(笑)あともうちょっとだから頑張って。
はっ、、はい



処理水の課題と赤潮が起きる理由


赤潮問題


さて、水はきれいになったんだけどここで難しい問題があって、処理水には【窒素】【リン】が多く含まれてんるんだ。
実はこの2つの成分は、植物にとっては素敵な栄養素。 でも水域にとっては赤潮問題の原因にもなるんだよ。
赤潮!小学校の社会で聞いたことあります(^^)

処理場できれいになった処理水には【窒素】【リン】が多く含まれています。

この2つの成分は、植物の育成段階では肥料となる栄養素です。
そのため、窒素やリンが多く含まれる処理水を海や川に流すと植物性プランクトンが大量発生して生態系に大きな影響を及ぼします。
水域に窒素やリンが多く含まれることを富栄養化と言い、いわゆる赤潮発生の原因のひとつとなってしまうのです。


処理水の窒素やリンを除去する事もできて【高度処理】と言うんだけど、 高度処理は取り入れるのも維持するのにもお金がかかるのが現状なんだよ。
聞けば聞くほどお金の問題環境の問題
問題・問題が山積みですね。
処理水の課題と対策に関する図解イラスト。左側は、処理水に含まれる窒素・リンが海や川で富栄養化と赤潮を引き起こす問題を示し、男性が『処理にも問題あるんだ』と指摘。中央は、これらの成分を除去する高度処理には多額の費用がかかる『コストの壁』を金袋の山で表現し、男性が困った表情をしている。右側は、太陽光発電、ガス発電、汚泥の2次利用(肥料やレンガ)といった『維持費を抑える工夫』を紹介し、女性が『色々な工夫!』と感心している。
そうなんだ。
だから、維持費を抑えるためにいろいろな工夫をしてるんだよ。
処理場で使う電気を太陽光発電でまかなったり、汚泥処理で発生するガスで発電したり。
それと、汚水から出た汚泥をさまざまなところで2次利用したりしてるんだ。

汚泥の再利用

下水処理過程で発生する下水汚泥は、様々な資源として活用されています。

肥料

砂利の代わりやセメントの原料

レンガやタイルの原料

へぇ~これはいいですね!!




処理場周辺の下水管はどう点検する?現場のしくみ


ところでみかんちゃん、下水処理場は汚水の最終到着地点だから、処理場付近の管は1500㎜とか3000㎜くらいの大きな管になって絶え間なく流れてくるんだ。 でも一時的に汚水を止めないと点検とか作業ができない事もあるよね?
さぁ、こんな時どうする?
あ、分かった!こんな時は止水プラグの登場じゃないですか!?
でもそんなに大きな管を塞げる特大のプラグってあるんですか?
止水プラグは13㎜の小さいものから3000㎜くらいの大口径を止められるものもあるんだ。

おぉ~大きい!!!
これどうやって地上から運んだんですかー!
これはエアープラグといって空気で膨らませているんだよ。
下の現場のように折りたたんでマンホールから入れて管内に設置してから膨らませるんだ。

最大使用管径φ2500㎜のプラグ。広げた様子。

φ600㎜のマンホールから挿入する様子。







みかんちゃん、今日までの説明で水の循環の一連の流れ、理解してくれたかな?
次回は、下水道管をどうやって点検や調査をしているかを説明するね。
はい!下水も水循環の一部で私達の生活になくてはならないってこと、
そして下水道施設も本当に重要なんだって実感しました!
わたし、下水道の事が好きになってきました



↓この記事で登場した製品↓
ランぺクッション
エアープラグ(バイパス無)
エアープラグ(バイパス有)


諏訪 美管

もっと知りたい方は次へ:
下水道の点検と調査:カンツールが紹介する管内検査システムの進化術(第5話)

下水道本管の点検と調査に焦点を当て、管内検査ロボットなど最新システムの基本から解説した記事です。初心者にも分かりやすい内容になっています。


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