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最新版:下水道の老朽化と対策|全国特別重点調査の全貌とは?(51話)

2025年4月9日水曜日

下水道の基礎知識

本記事の一部内容は、国土交通省が発表した「下水道管路の全国特別重点調査の概要」より引用・参照しています。
詳細は以下のリンクよりご確認いただけます。
▶ 国土交通省|報道発表資料「下水道管路の全国特別重点調査の概要」(2025年3月18日発表)

老朽化による道路陥没を未然に防ぐため、国が主導する下水道管路の全国特別重点調査が始動。調査の背景・手法・補助制度の詳細をわかりやすく解説します。



事業の目的と背景|下水道管路の老朽化と道路陥没事故の実態

道路陥没事故を防ぐために必要な「大規模下水道管路特別重点調査等事業」とは

管 とおる

美管ちゃん、下水道の陥没事故が年に約3,000件って知ってた?
その多くが老朽化した管が原因なんだよ。

陥没のメカニズムはこちらを参照してね。

諏訪 美管

えぇ~っ!そんなに!?
道がいきなり陥没するなんて…こわすぎます~!

管 とおる

でしょ?特に都市部だと、交通量も多いし人も多いしで、リスクがデカいんだ。
だから国は、「どこが特にヤバいか」を早めに調べて、自治体の動きをサポートしようってわけ。

諏訪 美管

なるほど!
ちゃんと優先順位をつけて、早めにチェックしていくってことなんですねっ。がんばってほしい~!

管 とおる

陥没事故が毎日のように起きてて、しかも原因のほとんどが古くなった下水道管。
しかも場所によっては中がどうなってるかすら、ちゃんと把握できてないとこも多いんだ。
だから大規模下水道管路特別重点調査等事業が発足されたんだ!

諏訪 美管

大規模下水道管路特別重点調査等事業
すごい、大きな事業に聞こえますね。


大規模下水道管路特別重点調査等事業|調査対象・手法・スケジュールの全体像

全国一斉実施へ──老朽化対策として始動した下水道管路の重点調査

管 とおる

大規模下水道管路特別重点調査等事業は、どこが危ないかを早めに見つけて、事故を未然に防ごうっていう、すごく大事な取り組みなんだよ。
老朽化してる下水道管を「全国で一斉にチェックする」国の大プロジェクトなんだ。


下水道管路の全国特別重点調査の概要
本記事の一部内容は、国土交通省が発表した「下水道管路の全国特別重点調査の概要」より引用・参照しています。
詳細は以下のリンクよりご確認いただけます。
▶ 国土交通省|報道発表資料「下水道管路の全国特別重点調査の概要」(2025年3月18日発表)

諏訪 美管

おお~っ! それって全国ですか? めっちゃスケール大きい!

重点調査の対象エリアは?優先される下水道管路の条件とは


管 とおる

メインはね、古くて更新されてない場所とか、陥没の前歴があるとこ。
あと、幹線道路や学校のそばなんかも優先的に調べるんだ。
国がリスクを評価して「ここは先にやっておこう!」って決めるんだよ。

大規模下水道管路特別重点調査等事業では、全国の下水道インフラの中でも、特に老朽化や構造的リスクが高いと判断される下水道管路を対象に、国土交通省が重点的な調査を実施しています。

調査の基本対象となるのは、以下の条件を満たす大口径の管路です。

調査対象の基本条件
・管径が2メートル以上
平成6年度(1994年度)以前に設置されたもの

加えて、以下のいずれかに該当する箇所は、より優先的に調査が行われます。
  • 優先調査① 地盤条件によるリスク
    埼玉県八潮市の道路陥没事故と同様の構造・地盤条件を持つ箇所
  • 優先調査② 腐食の可能性が高い箇所
    硫化水素などにより腐食が進行しやすい材質の管路や、換気が不十分な箇所
  • 優先調査③ 過去に陥没が発生した箇所
    再発リスクがある上、交通への影響が大きい地点
  • 優先調査④ 処理施設への影響が顕著な箇所
    沈砂池の堆積土砂が急増している処理場やポンプ場につながる管路

これらの条件に基づき、全国の下水道維持管理において、特に早期対応が求められる高リスク箇所が抽出され、計画的に調査・対策が進められています。

国土交通省は、こうした取組を通じて、都市インフラの安全性確保と、道路陥没などの事故未然防止を図っています。

最新技術で進める下水道管路調査の方法と手順

諏訪 美管

でも、下水道って地下にありますよね? どうやって見るんですか?

管 とおる

そこは最新技術の出番!
カメラで中を映したり、地中レーダーで空洞の兆候までチェックするんだよ。
点検もどんどんスマートになってきてるんだ。

出典:国土交通省「下水道管路の全国特別重点調査について(案)」(令和7年3月)
URL:下水道管路の全国特別重点調査について(PDF)をダウンロード


諏訪 美管

ロビオンの大口径カメラに、フロートが映ってますね。







大規模下水道管路特別重点調査等事業では、老朽化が進んだ下水道管路の状態を正確に把握するために、複数の高度な調査手法が組み合わされています。

これらの調査により、ひび割れや破損、空洞化といった構造的な異状を的確に検出し、計画的な維持管理や修繕の判断材料として活用されます。

主な調査手法は以下の通りです:(下水道管路の全国特別重点調査参照)
  • ① テレビカメラ調査(CCTV調査)
    専用の遠隔操作カメラを下水道管内に挿入し、映像で内部の状態を確認します。
    ひび割れ・破損・継手の開き・木の根の侵入・堆積物など、視覚的に劣化や異状を特定可能です。
  • ② 潜行目視調査
    作業員がマンホールから実際に管内に入り目視で点検を行います。
    カメラでは確認しにくい細部の劣化や異常を、直接観察できます。
  • ③ 打音検査
    管内で管壁を専用の器具で叩き、その反響音の違いから空洞や劣化部位を判断します。
    打音の変化は、内部の強度低下を示す重要な手がかりとなります。
  • ④ 地中レーダー探査
    地上から電磁波(地中レーダー)を照射し、下水道管やその周辺の空洞・異状を非破壊で検出します。特に、道路陥没リスクの高い箇所の特定に有効です。

これらの調査手法を適切に使い分け、あるいは組み合わせることで下水道インフラの安全性と持続性を確保するための信頼性の高いデータが得られます。

調査スケジュールはいつ? 2025年度から始まる全国下水道点検

管 とおる

期間は3年間。令和6年度~8年度までで、全国くまなくチェックする予定。初年度は特に危ないとこを重点的にね。

大規模下水道管路特別重点調査等事業は、老朽化した大口径下水道管路に対する緊急的かつ計画的な調査として、令和7年(2025年)3月18日国土交通省が実施を要請した国家プロジェクトです。

この事業における「いつまでに調査を終えるのか」というスケジュールは、対象箇所のリスク度合いに応じて明確に分けられています。

  • ① 優先調査区間:約1,000km
    埼玉県八潮市の事故現場と類似する構造・地盤条件を持つ箇所や、腐食・陥没のリスクが高いとされる箇所。
    令和7年夏頃(2025年7月〜9月頃)までに調査完了を目指す。
  • ② 一般調査区間:約4,000km
    優先度は高くないが、管径2,000mm以上かつ平成6年度(1994年度)以前に設置という基本条件を満たす管路。
    令和7年度内(2026年3月末まで)に調査完了を目標としている。

諏訪 美管

調べて終わりじゃないんですね? そのあとはどうするんでしょうか?

管 とおる

もちろん!
調査結果を使って「どこをどう直すか」って具体的な修繕計画を立てるんだ。
この事業は、ただの調査じゃなくて、未来のインフラ戦略の土台ってわけ。

調査は各地方公共団体が実施し、結果に基づいて補修・更新等の維持管理対策が計画されます。


補助制度の詳細|対象要件・補助率・自治体の対応フロー


補助金の仕組みと上限額|国の支援内容を徹底解説

管 とおる

今回の調査事業には、なんと99億円の国費が充てられてるんだよ。
国が財政支援することで、地方自治体の負担を減らしてスムーズに進めようってわけ。

諏訪 美管

きゅ、99億円!? それって結構な施設が建てられるくらいの金額では!?
国、本気ですね…!

管 とおる

対象は、管径2m以上平成6年度以前に設置された下水道管路を持ってる自治体。
都道府県や政令市を中心に、全国47都道府県で対象箇所があると見られてるよ。

都道府県別の国費配分額(大規模下水道管路特別重点調査等事業)

都道府県 国費(百万円) 都道府県 国費(百万円)
北海道677山梨県13
青森県79長野県72
岩手県64新潟県154
宮城県214富山県30
秋田県45石川県41
山形県45福井県29
福島県54岐阜県55
茨城県184静岡県50
栃木県114愛知県700
群馬県46三重県49
埼玉県578滋賀県46
千葉県441京都府179
東京都1,837大阪府1,158
神奈川県1,186兵庫県485
奈良県58和歌山県47
鳥取県16島根県14
岡山県103広島県168
山口県48徳島県38
香川県31愛媛県35
高知県47福岡県289
佐賀県9長崎県22
熊本県51大分県60
宮崎県48鹿児島県113
沖縄県69

※出典:内閣府「令和6年度予備費使用要求書」より作成(単位:百万円)

補助率は約50%|自治体負担を軽減する仕組みとは

管 とおる

補助率は約5割(50%)ってされてるよ。
国が半分出して、残りは自治体が負担する形。
ふだんの改築事業より高めの支援率なんだ。

諏訪 美管

半分も出してくれるのはありがたい!
これなら小規模の自治体も動きやすそうですねっ♪

管 とおる

調査ってお金も人手もかかるから、自治体にとっては結構大変なんだよね。
だから国が、調査費用の一部を補助する制度を用意してるんだ。

諏訪 美管

おおっ、それなら小さい自治体でも動きやすくなりそうです!

下水道管路の老朽化対策は、住民の安全確保だけでなく、都市機能の継続にも直結する社会課題です。
本補助制度は、自治体が限られた財源でも調査を進められる実務的な起点となるものであり、中長期の修繕・更生計画へとつなげていくことが重要です。
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