下水道の財政管理を理解する:予算編成と維持管理の支出について(第38話)

2024年1月11日木曜日

公共下水道

下水道の財政をイメージしたイラスト

管 とおる

前回は都市生活を支える下水道の仕組みと重要性について説明したね。
→下水道管路管理マニュアル解説:都市生活を支える下水道の仕組みと重要性(37話)←

今回は、下水道を管理する財政について説明するよ。
大事なことだけど、財政について知らない人が多いのが現実なんだ。

諏訪 美管

お小遣い貯められない私にとっては、しっかり聞かせて頂きます。


下水道維持管理マニュアル-2023-
はい、お願いします。






下水道の維持管理で使われるお金の種類

下水道の維持管理で使われるお金のイメージ
ところで、下水道施設を運営するお金ってどこから来るんですか?

僕たちが支払っている下水道料金が基本だけど
下水道の管理費用は、様々なところから資金のやりくりがされているんだ。
大きく分けると[3条予算]と[4条予算]が使われるんだ。

とおるさん、そもそも[3条予算]と[4条予算]ってなんですか?


[3条予算]と[4条予算]ってのは地方公営企業法に記されているもので、収支の種類を分けたものだよ!
僕たちが支払っている下水道使用料などの収益的収支[3条予算]、国からの予算や補助金などの資本的収支[4条予算]と呼ばれているんだ!



3条予算(収益的)、4条予算(資本的)のちがい


3条予算(収益的予算)とは?

3条予算は、日々の運営に必要なお金のことです。
これには、職員の給料事務用品の購入点検作業など、普段の活動で使うお金が含まれます。
このお金は、すぐに使ってなくなるもので、毎年の予算で計画的に使われます。


4条予算(資本的予算)とは?

4条資産は、大きな買い物や長期的な投資のためのお金です。
これには、新しい建物を建てること、大きな機械を買うこと、道路を作るなど、一度に大きなお金がかかるものや、長い間使えるものへの投資が含まれます。



つまり、[3条予算]下水道を使用するためのサービスに対するお金で、[4条予算]は、新しい管ポンプ場の建設などものを作るために使うお金のことだよ。

なるほど~!家庭で言うと、必要不可欠な毎日の食費が[3条予算]で、家とか車を買うとかが[4条予算]ってことですね。


そうそうそんなイメージ!
もう一度[3条予算]の図を見てみよう。
下水道の運営費は、僕たちが支払っている下水道使用料でやりくりしているんだよ!

3条予算の資本的収入と資本的支出の図
なるほど~!
ところで、下水道TVカメラ調査は下水道使用料[3条予算]国からのお金[4条予算]どっちで行っているんですか?




下水道TVカメラ調査は、3条予算、4条予算?

TVカメラ車の図
点検や調査は、運用費用だから[3条予算]
ただし、『優先順位付けを行ったうえで点検・調査、修繕を行う下水道ストックマネジメント』をしていれば、点検・調査にも補助金の収入が使えるんだ。

4条予算の資本的収入と資本的支出の図
あ、そうか!点検・調査は運用管理費だけど、ストックマネジメントで修繕まで計画していればTV調査も建設改良費の一部になるってことですね~


その通り!
ただし、この先自治体はウォーターPPPを行わないと補助金が出なくなるかもしれないと言われているから、いろいろな課題が出てくると思うよ。
このあたりは政府の方針で変わるから今後も最新の情報をとって伝えるから安心してね。

それはアンテナ立てておかないとですね~!とおるさん、今後もKANMAGAで最新情報をいち早く発信していきましょう!


ウォーターPPPとは?




下水道の企業債とは何か?


4条予算の企業債企業債償還金って言葉も聞き慣れないと思うから、簡単に説明するね

キギョウサイショウカンキン!?呪術か何かの必殺技ですか。
小学生でも分かるくらい簡単に説明お願いします。


企業債(地方債)

企業債(地方債)とは 地方公共団体が地方公営企業施設の建設・改良等に要する資金に充てるために国などから借りるお金のことです。(地方公営企業法 22)



つまり、企業債っていうのは自治体がお金を借りるために発行する「約束手形」のようなもののことだよ!

そのお金で新しく施設を建てたりするってことなんですね。

そうそう!例えば、町に新しい下水道を作りたいけどそのお金をすぐに全部用意するのは難しいでしょ?そこで町は「企業債」を発行するんだ!

お金を借りるってことは利息とかもあるんですか??

企業債には「お金を貸してくれたら、後で少し利息をつけて返すよ」という約束が書いてあって、数年後、その町は利息も含めて返済する仕組みになっているよ!この返済金のことを企業債償還金って言うんだ!


なるほど!自治体目線だと、企業債借り入れが収入で、それに利息をつけた企業債償還金の返金が支出なんですね。




減価償却費がなんで、4条予算の収入になるの?


みかんちゃん、実は、[3条予算]の支出が、[4条予算]の収入になる仕組みもあるんだ。
まずは、減価償却の意味を理解することが必要だから、ちょっと難しいんだけどみかんちゃんがわかるように説明するね。

[3条予算]と[4条予算]

んんん!?支出が収入になる~!!??
ちょっと何言ってるか分かりません。


減価償却とは何か?

減価償却は、物の価値が時間と共に下がることをお金で計算する方法です。
例えば、新しいパソコンを買ったら時間とともに価値が下がります。
これをお金で表すと、パソコンの価値は新品で10万円、1年後には8万円、2年後には6万円になるということです。

会社では、この計算を使って、価値が2万円ずつ減少するので支出費用として計上します。



すみません、もう少し分かりやすくお願いできますかぁああ~~~~涙

みかんちゃん落ち着いて(;'∀')

例えば、木材は、何かを作るために使った分だけの数を数えることができて、何年度に何個使ったって材料費として計算できるよね
はい

でも、既存の下水道は、使っても減るわけじゃないから何年度に何個使ったって計算できないよね。
だから、決められた計算方法にあてはめて、均等に使った事にするんだ。
じゃあ、材料みたいに目に見えて消費していくわけじゃないけど、下水道も時間がたてば消費したと考えればいいんですか?

その通り!そこで、このはっきり数えることは出来ないけど、消費して価値が減少していることを費用として表わしているのが減価償却なんだよ!

そういうことか~

減価償却費の計算は、(その建物や機械の金額)÷(耐用年数)で割り算するだけ!
下水管の耐用年数は50年だから、500万円のものなら1年あたり10万円を消費してるってこと

1000円の木材が100個 500万円の下水管(耐用年数50年)
[消費量]
1年目:10個(1万円)
2年目:20個(2万円)
3年目:15個(1万5千円)
...
[時間]
1年目:(10万円)
2年目:(10万円)
3年目:(10万円)
...
でも、実際は下水管の原価償却費の10万円って無くなってるお金じゃないですよね??

正解!その10万円分を『下水管は減ってないけど、今年1年で10万円分の使いました~』って費用計上できるわけ!
これを[3条予算]支出として費用を計上できるんだよ!



下水管を500万で建設(耐用年数50年)→ 原価償却は年間10万円
年度 1年目 2年目 3年目 4年目
3条予算収入 100万円 100万円 100万円 100万円
運営費用 90万円 90万円 90万円 90万円
原価償却費用 10万円 10万円 10万円 10万円
会計 0円 0円 0円 0円
100万円の収入があるけれど、実際に使ったお金は90万円

非現金支出としてそのお金を4条予算に回すことができるんだ。

これが、最初に言った[3条予算]の支出が、[4条予算]の収入になる仕組みっていうのがこのことなんだ。


減価償却
なるほど~!!こういう仕組みになっていたんですね~!

それじゃあ下水道の財政である管理運営費と建設改良費をまとめるよ!


管理運営費と建設改良費のまとめ



運営管理費

管理運営費は、下水道の日々の運用に関連する費用となります。
これには、施設のメンテナンス、修理、および日常的な管理作業が含まれます。

管理運営費の財源

下水道使用料

利用者が支払う使用料で、下水道の維持と運営に充てられます。

一般市町村費

住民税や固定資産税など、その市町村が独自に徴収することのできる税収をいい、運営管理費、建設改良費いずれにも使用できます。

建設改良費

建設改良費は、下水道を建設するための費用になります。
また、ポンプ場、処理場、管路の改築更新費の費用も含まれます。

建設改良費の財源

国費

国費は、国が補助する資金となります。
これにより、地方公共団体の財政的負担が軽減されます。

都道府県補助金

都道府県から提供される補助金となります。

企業債(地方債)

建設時に集中する財政負担を後世の世代に負担させることで、年次の負担を平準化するための地方債(借金)のことをいいます。

一般市町村費

住民税や固定資産税など、その市町村が独自に徴収することのできる税収をいい、運営管理費、建設改良費いずれにも使用できます。


会計や資産、減価償却・・・ いろいろ複雑なんですね。
下水道の財政管理が大変な事がわかりました。
私たちが快適に過ごせるために下水道の維持管理をしっかり行ってくれる行政に感謝しないとですね。

ほんとにそう思うよ。
お金がかかっても下水道は絶対になくてはならないものだから、お金がかかることはみんなに理解してもらえると嬉しいよね。


そうですね!そのためにも下水道の重要性と素晴らしさをみんなに伝えるためにわたしこれからもがんばります!




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