汚水と雨水:合流式と分流式下水道の理解 と雨水対策:(第2話)

2021年2月17日水曜日

下水道の基礎知識 止水プラグ

そもそも下水って?


みかんちゃん。前回は生活排水が家庭の排水管を通って【公共ます】まで流れ着いたところまでのお話をしたね(^^)  →前回の話【排水施設の仕組み】←
ところで、下水はお風呂の水やトイレだけじゃないんだよ。他は何だと思う?

諏訪 美管

うーん??あと何があるんですか?
それは、雨☔
下水道の世界では雨水(うすい)と呼ぶんだけど、 大雨で街に水害が発生しないよう雨が下水管を通って流れるようになっているんだ。

下水とは

生活排水の汚水と空から降る雨の雨水
この2種類を合わせて下水と呼びます。

汚水は家庭内の排水管から流し、
雨水は写真のような雨水マスから雨水を流し、
大雨や台風の時にも道路や住宅が水浸しないようにしています。
大雨の時に浸水しないのも下水道があるからなんだよ。 流し方は2通りあって、汚水と雨水を一緒に流す【合流式】と別々に流す【分流式】があるんだ。
へぇー!!そうなんですか。
どんな違いがあるんですか?











下水の経路 ー分流式と合流式ー

下水管の流し方は次の2種類の方法があります。
分流式・・・汚水管と雨水管が分かれており、汚水と雨水を別々に流す方式
合流式・・・汚水と雨水を1本の下水管で流す方式

分流式

メリット 
・汚水が確実に下水処理場にいくので、川や海への汚水の流出がない。
・下水処理施設の容量は汚水のみなので小さくて済む。

デメリット 
・汚水管へ雨水や地下水が浸入したり、雨水排水を汚水管へ誤って接続した場合、下水処理能力の超過をきたす恐れがある。

合流式

メリット
・分流式に比べ、下水管が1本なので建設費が安価になる。
・排水設備から下水処理場までが1本になるので維持管理がしやすくなる。
 
デメリット
・雨天時に雨水の量が汚水の量が増えると、川や海に汚水が流れ水質汚濁になる。
・ 合流式は分流式に比べて管径が大きく勾配も小さくなるため、晴天時には管内に汚濁物が堆積しやすく、雨天時には下水処理場へ汚水のほかに雨水が加わるため処理水量が多くなる。


分流式と合流式、どちらの方法も一長一短がありますね~。
東京や名古屋、大阪とか、古い時期から下水道がある街は合流式が多くて、 新しい街は分流式が多いんだ。実は合流式にはいろいろと問題が発生しているんだ。
ちなみに汚水はボクたちが支払っている下水道料金を使って市町村が管理して、雨水は税金で管理しているんだよ。




合流式下水道の問題点

合流式下水道には改善目標が3つあります。
(1)汚濁負荷量の削減【分流式下水道並み】
(2)公衆衛生上の安全確保【放流回数半減】
(3)きょう雑物の削減【流出防止】


これらを改善する方法は様々ありますが、1つの例として雨水吐き室(うすいばきしつ)という、大雨によって増水した下水を公共の水域へ放流するための施設について説明します。


通常の雨天時であれば下水は処理場側の下水管を流れていきますが、
大雨やゲリラ豪雨など、流れ込む水の量が急激に増えると雨水吐き室の中にある越流堰を越え,未処理の状態で海や河川に放流されるという問題があります。


越流堰を超えた下水は雨水で希釈されていますが、水質の悪い下水が河川に放流されてしまいます。


なるほど~。
あっ!じゃあ合流式を分流式に整備しなおせばいいんじゃないですか!?
それがそう簡単にはいかないんだ。


合流式を分流式に整備するためには・・・

●道路にもう一本の下水管を整備しなければならない。
●その地域すべての宅地排水設備を汚水と雨水を分けられるよう,整備しなければならない。
●分流式にしたら,道路などに降った汚れた雨水の対策を,別にしなければならない。

 これらの問題を解決しようとすると,多くの工事と事業費が必要となります。


川や海は汚したくないけど莫大なお金がかかる…かぁ。
とても難しい問題ですね。
だから、合流式下水道の市町村では、現状の設備のまま水環境を維持するために、貯留施設を建設したり様々な工夫をしているんだよ。
ちょりゅう施設?
そう!豪雨などで急激に増加した雨水を一時的に溜めておく場所のこと!
記憶に新しいところだと、2020年の夏に、渋谷区に最大4000トンを貯めておける大規模な雨水貯留施設ができたんだ。

引用元:テレ東NEWS


あ!!そのニュース見ました!!
天井が高い地下宮殿みたいなところですよね!!!
あれが貯留施設かぁ!
そうそう!それそれ!(地下宮殿・・・笑)
ここ何年かゲリラ豪雨や局地的な大雨で大きな浸水被害が発生しているのをニュースで目にしたことがあると思うんだけど、下水道はこの貯留施設以外にもいろいろな雨水の浸水対策を行ってるんだよ。
また、同じ用途で雨水貯留管もあるんだよ。



雨水貯留管

東京都中野区~杉並区にかけての地下にある和田弥生幹線は、下水道事業の中では国内最大級の貯留管です。
直径8500mm  延長2.2km  120,000㎥ の水を貯めることが可能となります。




その他の浸水対策

浸水の要因には、
都市化や地下利用の高度化により雨が河川等に排水できずに浸水する
内水氾濫







河川から水が溢れる洪水氾濫があります。











これを防ぐため各市町村が【ハード】と【ソフト】の両面からさまざまな浸水対策を行っています。

【下水道による総合的な浸水対策のイメージ】※引用元:国土交通省HP



ハード面では貯留施設や雨水を地面に浸透させる設備を作ったり、
ソフト面ではこれまでのデータからハザードマップを公表したり、市町村ごとに様々な浸水対策をしているんだよ。

浸水対策の効果実例
事例1:岡山県岡山市
岡山市では、平成23年の台風12号の大規模な浸水被害発生地区などを中心に、下水道の整備による浸水対策を実施しました。

その結果、平成30年7月豪雨では、対策を実施した排水区(西・芳田・浦安)では浸水被害を大幅に軽減、一方、未対策区域である地区では浸水が発生しました。

事例2:広島県広島市
広島市では、10 年に1 回程度降る非常に激しい雨(1 時間降雨量53mm相当)に対応できるよう、雨水貯留池(貯留量14,000m3)などの施設整備を実施しました。
その結果、平成30年7月豪雨では、当地区の床上・床下浸水被害の報告は0件と、浸水被害の軽減に大きく貢献しました。

なるほどーーー!!!どの市町村も水害やその町のみんなの暮らしを守るためにいろいろ工夫しているんですね。

最後に、カンツールの最新雨水対策を紹介するからみかんちゃん、あともう少しお話に付き合って!
2020年にカンツールでも雨水対策の一つとして
新商品【常時設置プラグとしてセーフティープラグ】をリリースして注目を浴びているんだよ。
常時設置プラグ?
       
大雨が降ると下水が上流に逆流することがあって、工場とか大きな施設に逆流すると施設が被災して大変なことになるから、そんな時にボタン一つで水を止めることもできる日本初の止水プラグなんだ。
逆流以外にも、事故や緊急時の有害物質の流出を防いだり、下水界の防火シャッターみたいなプラグなんだよ!!


止水プラグ?
詳しくはここを見てね!
止水プラグ
常時設置プラグ:セーフティープラグ
ところで、とおるさん…。
けっきょくお風呂の水は公共ますからどこへ行くんですか?
あぁ!!ごめんごめん、雨水対策の話に熱くなってしまって排水経路のこと、すっかり忘れていたよ!
次回は、お風呂の水が公共ますの先、処理場にたどりついてからの説明をするね!
はーい(^^)
でも今日のお話もとってもためになりました!!
大雨の日も普通に生活できている理由がこんなところにあったなんて、下水道って縁の下の力持ちですね!!



↓この記事で登場した製品↓
セーフティプラグ  
止水プラグ  


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