遠隔操作による下水道管理の未来:ロビオンESと建設DXの最新動向 (第32話)

2023年3月24日金曜日

TVカメラシステム



管 とおる

 

みかんちゃん、前回は排水管清掃の新兵器を紹介したね。

→【第31話】排水管清掃機の新兵器誕生 ←


諏訪 美管

はい ワイヤーを回転させて管を綺麗に。
ああいう安くて高機能な機器がどんどん増えるといいですね
\(^o^)/

ところでこれを見て!

わ~、とおるさんなにか表彰されたんですか?

表彰みたいなものかな(^^)

管内カメラ検査システム(ロビオン)の遠隔調査が
【公益社団法人日本下水道管路管理業協会】から新技術支援制度に採択されて、
この度修了証をいただいたんだ。

→【 新技術支援 第16号 】遠隔調査における管内カメラ検査システム(ロビオン)←  

わ~、すごーい!!

あれ??なんかこの証書、前にも見たことあるような???

お!よく覚えているね(^o^)/
みかんちゃんが前に見たのは、去年採択された【首振り式押込みカメラ(アジリオス)による圧送管調査技術】のことだね!アジリオスの圧送管調査、覚えているかな?

はい!圧送管の空気弁から首振り式押込みカメラを挿入して調査するんですよね。 

その通り!!
では、今回は新技術支援制度に採択された、離れた場所から本管TVカメラ調査を行える『ロビオンES』について説明するね!

はい😉よろしくお願いします。








建築現場のDX:遠隔臨場


みかんちゃん
現在、建設業界は変化の節目を迎えてるんだ。それは建設DX

DXってデジタル化によって便利でもっと内容を良くしていくっていうことでしたよね!
前に記載がありましたね。→ 下水道にDX ←




建設DX

デジタル技術を使って、これまで行われていた建設業の仕事のやり方やビジネスそのものを変革することです。

国土交通白書によると建設業における2020年の平均就業者数は492万人で1997年のピーク時から約28%も減少しており、建設業は担い手不足が大きな課題となっています。
解決する手段としてDXによる生産性向上が進められており、
今、建設業界はDXで大きく変わろうとしています。

建築DXの他に、遠隔臨場という言葉も活性化しているんだ。

えんかくりんじょう???

遠隔臨場とは、コロナ禍ですっかり普及したリモートワークの建設現場版と言えばわかりやすいかな?

遠隔臨場(えんかくりんじょう)

遠隔臨場とはウェアラブルカメラやネットワークカメラを活用し、現場に行かずとも離れた場所から臨場を行うことです。公共工事の建設現場において「段階確認」、「材料確認」と「立会」を遠隔で行うことが国土交通省により定義されています。

引用元:国土交通省 建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)令和4年3月抜粋



離れた場所から「材料確認」「段階確認」「立会」を行うことなんですね。 
 
そうだよ。 今回説明するロビオンES(遠隔操作)も離れた場所から行うってことでこれも遠隔臨場の1つ、下水道維持管理のデジタル化なんだ!
 
 


ロビオンES(遠隔操作)について

では、ロビオンES(遠隔操作)が何かを説明するね。

これが現場と事務所のイメージだよ。
オペレータはテレワークで仕事をしていると思うとわかりやすいかな?

オペレータは現場へ行かなくても事務所で操作できるんですか~!?

そう!すごいでしょ。
移動時間がないから、時間の有効活用ができるようになるって事なんだ。
それは便利!すごく効率的ですね(^o^)/

ここからは、ロビオンES(遠隔操作)に必要な機材を説明するね。

TVカメラ車側に、送信機とアプリケーションをインストール


事務所側には受信した映像を映し出す専用のパソコンと管内カメラを操作するためのコントローラを用意。


コントローラには調査に必要な機能がすべて備わっているから現場と同じ感覚で遠隔操作することができるんだよ!
すごーい!これならオペレータが1日に何件も現場をできたり、人手不足解消になりますね!!




ロビオンESの映像

下の写真を比べてみて!
左が従来調査、右が遠隔操作の映像だよ!

従来の映像も、遠隔で事務所に送られてきた映像も画質は全然変わらないですね!!

でも、離れた場所だと映像の遅延とか大丈夫なんでしょうか??なんか、遅れて届きそう。。。

超短遅延伝送を実現する"RASCOW2"っていう特殊なテクノロジーを使っているから、遅延はほとんど発生しないんだ(*^^*)

すごい!!遠隔操作でも現場と同じたった0.5秒なんですね!!!




通信が途切れても大丈夫?

ところで、キレイな映像が遅延なく送られてきても、通信自体に問題が発生した時は大丈夫なんでしょうか?
リモートワークしてても通信に問題がある場合、カクカクしたり、音声が聞こえなかったり映像がフリーズしたりしちゃいますよね?


確かに、遠隔操作における通信切れは大きな問題となってるよね。
その問題を回避するために、遠隔操作にはマルチリンク回線を導入しているんだ。

マルチリンク回線??

マルチリンク回線というのは、A社、B社、C社 の 3つの回線を利用して、
通常時はデータを3分割して1/3・1/3・1/3で送受信。

もしも1回線不調になったら、
他の回線が1/2・1/2に切り変わる仕組み。

だから、安定した通信環境が提供できるんだよ。
なるほど!これなら通信に問題が発生してカメラを制御できなくなったりすることもないですね(^o^)



遠隔操作のメリット

遠隔操作の大きなメリットは生産性の向上と業務の効率化!

生産性の向上
オペレータは現場に行かないことから、現場への移動の時間が削減されることで、その時間を他業務に充てることが可能。
業務の効率化
オペレータは事務所にいることから調査と同時に報告書の作成が可能。

事務所にいながら調査ができるっていいことづくしですね!

その他にもメリットはたくさんあるんだよ!
例えば、みかんちゃん現場に行って、TVカメラ調査のオペレートしてきてって言われたら不安だよね?

いやいや、不安どころか、絶対無理です(汗)

じゃあ、僕が隣でサポートするならTVカメラ調査してって言ったらオペレートできるかな?
はい!それなら安心して私でもオペレートできそうです。

こんな風に、事務所での遠隔操作なら技術の引継ぎや社内研修の用途にも使えるんだ!
もしも遠隔操作システムが各地にあれば、オペレートセンターから全国のTVカメラ車のオペレートだってできちゃうんだよ。

画期的な構想と仕組みですね。

インターネット環境が良好な場所で作業できるから、ライブ配信をして自治体の担当者に即座に状況を伝えることが出来ちゃうよ。

これがまさに遠隔臨場というやつですね!
覚えたことをすぐ使えた(^o^)




現場実証報告


さて、同じ条件下で従来の方法と遠隔操作でそれぞれTV調査を実際におこなってみたから、内容を比較してみよう。

はいっ!

現場実証では以下の項目について検証したんだ。


従来調査

遠隔調査

作業はそれぞれ3人なんですね。


調査した路線は、O県K市
1⃣ TP Φ250 7スパン 246.91m
2⃣ HP Φ250 6スパン 146.91m
3⃣ VU Φ250 1スパン 50.60m
合計14スパン 444.42m

調査した総括表を記すね。

映像比較

これが現場実証で行った映像比較

どちらも全く同じ画質の映像に見えます!!

そう、だから、管内異状の把握についても全く問題なかったんだ。

操作性


操作性に関しても、遠隔操作は従来調査と同じように操作ができたよ。


操作性が同じなら、私はゲームコントローラでやってみたいです(*^^*)


作業時間

つぎは少し小難しはなしになるけど作業量の把握について。
下の表は444.42m行った時のオペレートの時間なんだ。

同じ場所を同じ人が行った時、
従来は270分 
遠隔操作は305分時間

かかったんだ。

下の表は、片付けしたり、段取替えをしたりしりした作業員の総合時間
444.42m調査するのにかかった時間は

従来調査は総合495分、3人作業員総合計は1485分 
遠隔調査は総合536分、オペレータは現場に行かないためオペレートした時間だけ計上すると1377分 つまり、1485-1377分=108分の作業時間を削減ができ オペレータは、オペレート以外の時間231分を有効活用できる生産性の向上になるんだ。
なんか難しいけど、ようは従来調査に比べて231分、つまり約4時間分も時間が浮いたってことですね!

通信の品質

遠隔調査のTV 調査を行っていたなかでブロックノイズや遅延、通信切れは一度も発生せず、良好な状態だったよ。

すごい!さっき教えてもらったマルチリンク回線のおかげですね!

結論として、今後遠隔操作は下水道維持管理に有効活用出来る方法と考えられる。

たしかにメリットいっぱい!遠隔操作ってすごーい(*^^*)



ロビオンES遠隔操作(遠隔操作)の未来

ここ1・2年で『遠隔臨場』の推進の動きが一層加速していて、建築DXが今後普及していくことは確実。

なるほど~!じゃあ乗り遅れる前にいち早くDX化したいですね!下水道維持管理の未来ってどうなるんだろう?

僕が、実際に遠隔操作の実証実験をしてみて、発注者や経営者、現場の作業者の立場から感じたことはこれなんだ。


発注者

・遠隔臨場を導入することで「段階確認」「材料確認」「立会」「緊急確認」などの作業効率化を図る事が可能となる。

経営者

・ICTシステム導入による企業価値が向上する。
・年齢、性別、ハンディキャップを問わない人材活用が可能になるとともに、オペレート作業を集約すること等で業務の効率化が図れる。
・OJTに利用できる(職場での実践を通じて業務知識を身につける育成手法)

作業者

・これまでの現場への移動等の時間が削減されることで、その時間を他業務に充てることが可能
・初心者も熟練者のサポートを受けながらオペレートが出来る。
・事務所にデータが保存されるため報告書作成が迅速化できる


どの立場からでも業務が効率的になりますね!



まとめ

遠隔操作のメリットについてまとめると、こんな感じ


人材育成・技能伝承に役立つ

現場にいない熟練技術者からアドバイスを貰える機会が増えることで、人員の育成が期待される。また、映像を録画しておくことで、後々の研修資料として活用することも可能になる。

安全性の向上

現場で問題が起こった際の状況説明が的確でスピーディーになり対応も早くできる。

人手不足の解消

建設業界に携わる技能労働者は高齢化が進行しており60歳以上が全体の約25%を締めている。そのため、今後大量離職が見込まれ中長期的に人手不足となる。遠隔臨場における作業環境の向上は現場の働き方改善に役立ち、人手不足の解消や業務効率化における生産性の向上にも繋がる。

下水道管路管理業界に至っての有資格者(総合技士、主任技士、専門技士)の年齢層は、50歳以上は全体の38%、40歳以上となると全体の77%と高い割合をしている。(2023年3月時点)

コロナウイルス感染症対策に有用

遠隔臨場は、現場での人と人の接触機会を減らせるため、感染予防対策としても注目されている。


遠隔操作の技術が下水道維持管理業界の未来の改革になりそうですね。



管路協会新技術 実証報告書の一部はこちらから

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