そこで示された資料をもとに、これからの管路管理がどう変わるのかを読み解きます。
■ 本記事の出典について
本記事は、国土交通省が公開している第7回
下水道管路マネジメントのための技術基準等検討会(令和8年8月20日開催)のページで公表されている会議資料をもとに作成しています。記事中の図版もすべて同検討会の資料をもとにしたものです。
なお本検討会は議論の途上にあり、最終的なとりまとめは公表前です。本記事は現時点で示されている方向性としてお読みください。
おもに参照した資料:資料2-1
下水道法等の一部を改正する法律案について/資料2-2
下水道管路メンテナンス技術の高度化・実用化に向けた検討状況について/資料3-1
下水道管路の全国特別重点調査の結果詳細について/資料3-2
下水道管路の全国特別重点調査の分析について/資料4
「下水道管路マネジメントのための手引き策定調査専門委員会」での検討状況/資料5
安全対策について/参考資料1
下水道管路マネジメントのための技術基準等に関する中間整理
諏訪 美管
とおるさん、最近ニュースで下水道法の改正って言葉をよく見かけるんですけど…下水道の法律って、そんなにコロコロ変わるものなんですか???
管 とおる
いや、めったに変わらないんだよ。だからこそ今回は大ごとなんだ。
きっかけは、令和7年に相次いだ重大な事故。「今までのやり方では守りきれない」と国が判断した、ということなんだよ。
諏訪 美管
事故がきっかけ…なんですね。(・_・;)
なんだか、軽い気持ちで聞いちゃいけない話みたいです。
ラット君
ボクたちネズミも管の中に住んでるから他人事じゃないチュー。でも今日の話の先には、ちゃんと希望もあるチューよ🐀
管 とおる
そのとおり。今日は令和8年8月20日に開かれた第7回 下水道管路マネジメントのための技術基準等検討会の資料をもとに、法改正の中身と、それを支える新しい技術まで一気に見ていくよ。ドローンも光ファイバーも出てくるからね(^^)
【令和8年秋ごろ最終決定】
管路の状態を4段階で評価する健全度の診断基準が法令レベルで整理され、点検頻度の引き上げ、点検結果の公表義務、そして人が管の中に入らない「管内No Entry」という方針転換が打ち出されています。
本記事では、令和8年8月20日開催の「第7回 下水道管路マネジメントのための技術基準等検討会」で示された資料をもとに、現場が押さえておくべき変更点と、それを支えるドローン・ロボット・光ファイバーといった次世代技術を、初めての方にもわかるように解説します。
なぜ今、下水道法が変わったのか|2つの事故が突きつけたもの
令和7年1月、埼玉県八潮市で大規模な道路陥没が発生しました。原因となったのは地中の下水道管路で、復旧作業のあいだ広域にわたって下水道の使用自粛が要請される事態となり、約120万人規模の生活に影響が及んだと報じられています。 そして同じ年、埼玉県行田市でも管路に起因する陥没事故が発生。国土交通省はこれらの事故を受け、令和7年8月4日付で「下水道管路内作業における安全確保の徹底について」という事務連絡を、下水道管理者と委託事業者に向けて発出しました。
諏訪 美管
えぇ〜っ!?120万人って、ほぼ広島市の人口くらいじゃないですか!
その人たちが一斉に水を流せなくなるって…想像を絶します。
硫化水素は「前回大丈夫だった」が通用しない
もうひとつ、検討会が繰り返し警告しているのが硫化水素中毒です。管路内での作業には酸素欠乏・硫化水素中毒・転落といった危険が潜んでおり、なかでも硫化水素は特に注意が必要とされています。 資料が強調しているのは、過去に問題がなかった現場でも、作業中に濃度が上昇して事故に至った事例があるという点です。汚泥の流量など現場の環境は一定ではないため、「前回は平気だったから今回も平気」という経験則が、そのまま命取りになりかねません。
管 とおる
だから資料は「作業前の濃度測定に加えて、作業中も濃度変化に常時対応できる体制を組むこと」と書いているんだ。測って終わり、じゃないんだよ。
改正下水道法の3本柱|「経験則」から「科学的根拠」へ
これらの事故を受けて改正された下水道法は、大きく3つの方向を示しています。-
1. 確実な状況把握と、その公表管路の状態を統一された基準で診断し、結果を住民にも見える形で公表する。「わかっているのに伝わっていない」状態をなくします。
-
2. 管内に入らないことによる安全確保潜航目視に頼らず、機械やセンサーで状態を把握する。作業員を危険に近づけないことを、努力目標ではなく前提に据えます。
-
3. 道路管理者・他自治体との連携強化下水道部局だけで抱え込まず、道路管理者や近隣自治体と計画・費用・人材を共有できる仕組みを整えます。
諏訪 美管
つまり「ベテランの勘に頼る時代は終わり。データと技術で管理する」ってことですね!
管 とおる
まさにそれ!みかんちゃん、センスあるね♪
経験が無価値になるわけじゃない。経験を、誰でも使えるルールに翻訳するのが今回の改正なんだよ。
健全度I〜IVとは?管路の「健康診断」が全国統一基準に
今回の改正でもっとも実務に効いてくるのが、管路の状態を評価する健全度の考え方です。管路の傷み具合をI〜IVの4段階で判定し、段階ごとに取るべき対応を結びつけます。人間の健康診断でいうA・B・C・D判定にあたるものだと考えるとイメージしやすいでしょう。
判定の目安と、そこから決まる対応
| 健全度 | 状態の目安 | 求められる対応 |
|---|---|---|
| IV | 鉄筋が広範囲に露出している | 緊急改築(即時対応) |
| III | 骨材が広範囲に露出している | 改築の設計に着手/空洞調査が必須に |
| II | 表面が荒れている | 監視の強化 |
| I | 目立った異常がない | 通常の維持管理を継続 |
諏訪 美管
人間も「C判定以上は精密検査してください」って言われますもんね。
管路もまったく同じ考え方なんですね!
管 とおる
そう。しかも今回の検討会では、クラック(ひび割れ)の2mmという基準をどう扱うか、新旧の診断基準をどう読み替えるか、塩化ビニル管や更生管など管種ごとにどう判定するかまで踏み込んで議論されているんだ。かなり細かいところまで詰めている段階だよ。
ラット君
全国どこで測っても同じ答えが出る「ものさし」ができるってことだチュー!自治体ごとにバラバラだと比べようがなかったチューからね♪
諏訪 美管
詳しくはオンラインセミナーで♪
健全度の判定基準がどう変わるのか、その中間整理をセミナー形式でさらに詳しく解説しています。
点検頻度はこう変わる|5年に1回から3年に1回へ、そして空洞調査
診断基準と並んで現場に直結するのが点検頻度の見直しです。 これまでは、硫化水素による腐食が進みやすいなど化学的な弱点がある箇所について「5年に1回以上」が目安とされてきました。改正後は、そこに地盤的な弱点という視点が加わります。地盤が緩い、大口径である、緊急輸送道路の下を通っているといった条件が重なる箇所は、より高いリスクを抱えているという考え方です。
諏訪 美管
えっ、頻度が上がるってことは…単純に仕事量が増えるってことですよね?
ただでさえ人手が足りないのに、現場は回るんでしょうか(・_・;)
管 とおる
鋭い。だからこそ頻度アップと無人化・省力化はセットなんだよ。人手のまま頻度だけ上げたら、現場が先に潰れてしまう。
このあと出てくるドローンやセンサーの話は、実はこの問題への答えでもあるんだ。
点検結果は年1回公表へ|GISで進む地下インフラの見える化
管路の状態を把握しても、それが関係者の内側で止まっていては住民の安心につながりません。今回の改正では、点検結果を年1回以上公表することが求められるようになりました。 検討会では、どのように表示するかという公表の表示ルールについても議論が進められています。将来的にはGIS(地理情報システム)の地図上で管路の健全度を色分けし、誰でも確認できる形が目指されています。諏訪 美管
自分の家の下を通っている管の状態が、スマホで見られるようになるってことですか!?
ちょっと怖い気もしますけど…正直に教えてもらえる方が、ずっと安心ですよね。
管 とおる
そこなんだよ。情報の透明性が、そのまま市民の信頼につながる。
「悪い数字を隠さない」ことが、結果的に予算や理解を得る力になる——これも今回の改正の大きなメッセージだと僕は思っているよ。
「管内No Entry」の徹底|人が入らない点検が第一選択になる
安全確保について国が示した答えが、「管内No Entry」という考え方です。資料では、下水道管理者は潜航目視によらない方法を最優先して導入することが求められると明記されています。 これは「なるべく入らないようにしましょう」という努力目標ではありません。入らない方法があるなら、まずそちらを選ぶという優先順位の転換です。
それでも入らざるを得ないときの条件
とはいえ、どうしても人が入る必要のある場面はあります。その場合の条件も明確にされています。-
作業前の濃度測定酸素濃度と硫化水素濃度を必ず測定してから入る。ここは従来どおりの大前提です。
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作業中の常時モニタリング濃度は作業中に変化します。変化に常時対応できる体制を組み、異常があればすぐ退避できるようにします。
-
経過を見ながらの安全管理チェック作業の進行にあわせて安全管理の状況を確認し、事故防止を徹底することが重要とされています。
ラット君
「入らない」が第一、「入るなら万全で」が第二だチュー。順番が大事なんだチューよ!🐀
諏訪 美管
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「管内No
Entry」とドローン活用、2030年へのDXロードマップを詳しく解説しています。
次世代テクノロジー|AB-Crossの三刀流と光ファイバーの「心電図」
「入らずに、しかもこれまでより高い頻度で点検する」——この一見むちゃな要求を成立させるのが、検討会でも報告されている次世代の点検技術です。AB-Cross事業が実証する3タイプのロボット
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Air ── 飛行型ドローンGPSの届かない管内でも自己位置を推定しながら飛行し、微細なクラックをAIが自動検出します。航続距離1,000m級への延長が目標に掲げられています。
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Surface ── 天井走行ロボット管の上部を走行して点検します。水位に左右されにくく、飛行型が苦手とする区間を補完します。
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Water ── フロート式点検ロボット水面を流れながら調査するタイプ。水を抜かずに調査できるため、現場の負担とコストが大きく下がります。
諏訪 美管
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諏訪 美管
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諏訪 美管
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水上走行カメラ「スイロード」とは何か、その仕組みと使いどころを基礎から解説しています。
諏訪 美管
空・天井・水面の三刀流!なんだか冒険チームみたいでカッコいいです♪
しかも2mmのひび割れをAIが見つけるって、定規の目盛りより細いじゃないですか!
光ファイバーで24時間見張る「インフラの心電図」
もうひとつ、検討会でセンサー活用の考え方として議論されているのが光ファイバーによる常時センシングです。ケーブルを管に沿わせておくと、管がわずかにズレたり動いたりしたときに光の波形が乱れ、それを検知できます。
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STEP1 ── 変状の発生管路にズレや破損が生じます。従来はここから次の定期点検まで気づけませんでした。
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STEP2 ── ひずみ波形に現れる光ファイバーを通る光の波形が乱れ、変化が数値として捉えられます。
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STEP3 ── 即座にアラートスマートマンホールなどを経由して通知が上がり、その日のうちに異常を知ることができます。
諏訪 美管
まるでインフラの心電図ですね!
ということは、管路が「心臓発作」を起こす前に気づけるってことですか???
管 とおる
うまい表現だね(^^) そこが狙いなんだ。
将来はこのデータをAIが分析して「そろそろここが危ない」と予測する。決められた日に見に行く定期点検から、危なくなったら教えてくれる予防保全へ——考え方そのものが変わっていくんだよ。
縦割りを法律で壊す|法定協議会・広域連携・権限代行
技術が揃っても、それを動かす体制がなければ現場は変わりません。今回の改正には、組織の壁を越えるための仕組みが盛り込まれています。下水道管理者と道路管理者が同じテーブルに着く
八潮市の事故は、地下と路面の管理が別々であることの弱点を浮き彫りにしました。管が傷んで陥没が起きたとき、それは下水道の問題なのか道路の問題なのか——その線引きに時間を取られている余裕はありません。 改正では法定協議会という枠組みが設けられ、下水道管理者と道路管理者が一緒に計画を立て、費用も分担できるようになりました。
地下空間のデジタル化という土台
あわせて進むのが、地下施設の位置情報の整備です。緊急時に「どこを掘ればいいかわからない」という事態を避けるため、工事完了時に正確な竣工図を提出することが求められる方向にあります。下水道管だけでなく、水道・ガス・電線といった地下埋設物の位置をデジタル地図に統合していく——いわば地下のマップづくりです。小さな自治体が一人で抱えないための広域連携
ドローンを買う、専門人材を確保する、データを分析する。これらを小規模な市町村が単独で揃えるのは現実的ではありません。そこで、都道府県が中心となって複数の自治体がリソースを共有する広域連携の仕組みが法律に位置づけられました。さらに権限代行の制度により、小さな自治体の管理業務を都道府県が代わりに担うことも可能になります。諏訪 美管
高価な機材をみんなでシェアしたり、詳しい人を融通し合えたりするんですね。
それは現場の方にとって、本当にホッとする話だと思います。
ラット君
「一人で抱えなくていい」って法律に書いてあるのが大きいチュー。気合いじゃなくて仕組みで支えるんだチューね♪
「うまくたたむ」という選択と、次世代インフラの3本柱
検討会の議論には、これまであまり表に出てこなかったテーマも含まれています。下水道区域の廃止・縮小です。 人口が減り、住まいがなくなった地域で、ほとんど使われない大きな管路を維持し続けるのは容易ではありません。そうした地域では、最新型の浄化槽へ切り替えるほうが費用も労力も抑えられるケースがあります。諏訪 美管
下水道って広げていくものだと思っていました。縮小と聞くと、ちょっと寂しい気もします…
管 とおる
その気持ちはよくわかるよ。でもね、「守る」だけでなく「うまくたたむ」判断ができることも、インフラの未来を本気で考えている証拠なんだ。
限られた予算と人を、本当に必要なところへ回すための選択なんだよ。
次世代下水道マネジメントを支える3本柱
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柱1 ── 科学的データによる管理健全度I〜IVという全国共通のものさしで状態を判定し、点検頻度と対応を客観的に決める。経験則を、誰でも使えるルールに置き換えます。
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柱2 ── 管内No Entry潜航目視によらない方法を最優先し、人を危険に近づけない。ドローン・ロボット・光ファイバーがそれを技術面から支えます。
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柱3 ── 広域連携と情報公開道路管理者や近隣自治体と組み、結果を住民に開く。一人で、一部署で抱え込まない体制をつくります。
諏訪 美管
老朽化するインフラにも、そこで働く人の安全にも、両方きちんと向き合う——そのための3本柱なんですね。
今日はすごくたくさん学べました!管路って、こんなに奥が深かったなんて…!
管 とおる
こちらこそ、最後までよく聞いてくれたね。
検討会はまだ議論の途中で、最終的なとりまとめはこれから公表される見込みだよ。今日の話を土台にしておけば、続報が出たときにすっと入ってくるはずだ。
「管内No
Entry」を当たり前にする時代へ——現場のみなさん、今日もご安全に(^^)
管 とおる
それとね、みかんちゃん。この検討会の報告書(とりまとめ)が出たら、その内容を解説するオンラインセミナーをやろうと思っているんだ。
諏訪 美管
わぁー、それは絶対に聞きたいです!私も受講させてください♪
📢 オンラインセミナー開催予告
本検討会のとりまとめ(報告書)が公表され次第、その内容をわかりやすく解説するオンラインセミナーの開催を予定しています。改正下水道法のポイント、健全度の新しい診断基準、そして「管内No
Entry」に向けた実務対応まで、現場でそのまま使える形でお伝えします。
日程:未定(報告書の公表時期に合わせて決定します)
開催が決まりましたら、KANMAGAの記事およびカンツール公式サイトでお知らせします。過去のオンラインセミナーはアーカイブでご覧いただけます。
諏訪 美管
もっと詳しく知りたい方へ♪
全国特別重点調査で強化された「緊急度判定」の新基準を解説しています。
諏訪 美管
次の話は準備中です♪
第68話は現在制作中。検討会のとりまとめが公表され次第、続報をお届けします。しばらくお待ちください。
下水道のお困りごとは
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